フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属するFFKM(パーフロ)ゴム材質の耐熱・耐圧タイプであるフロロパワーFFH90(Fluoro-Power FFH90/FP-FFH90)は、280℃の高温領域でも使用可能な耐熱性を有し、硬度が高く設計されていることから良好な耐圧性も兼ね備えている高温・高圧力用のOリング用のゴム材質です。また、原材料のパーフロロエラストマー(FFKM)に由来する秀でた耐薬品性は、殆ど全ての流体に対する耐久性を示します。更に、フロロパワーFFH90が保有するもうひとつの特徴的な性能として、非常に優れた耐ブリスター性(防爆性)が挙げられます。フロロパワーFFH90は、RGDテスト規格ISO-23936-2(英国)の公的認証を取得しており、石油や天然ガスの掘削機械などで頻繁に発生する急速減圧に対して優秀な耐久性を有しています。尚、高硬度であることから低圧シールには適していない他、伸び率が低いことを考慮し、円筒面への装着時にはOリングに対して無理な力を掛けることが無いように注意が必要です。
* フロロパワーFFH90は、RGDテストに合格(ISO 23936-2認証取得)しているAED材質です。
* Oリング以外でも様々な形状の製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
* フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。
化学構造
4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルエーテル共重合物です。主鎖の全てがフッ素化合物で、炭化水素結合が無いことから極性基にも強く、非常に優れた耐薬品性や耐熱性を有しています。フロロパワーFFH90は、CSM部分を改良することで耐熱性がより一層強化されている他、独自の配合技術によって硬度調整が非常に難しいFFKM材質の高硬度化を実現し、優れた耐圧性の付与にも成功しています。
関連する法規制等
フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質は、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、ご使用の条件などを注意深くご確認ください。
フロロパワーFFH90と温度別(25〜300℃)耐熱老化試験
代表的な耐熱グレード(フロロパワーFFS、フロロパワーFFSW、フロロパワーFFHW、フロロパワーFFH90、フロロパワーAPHW、フロロパワー3FH)に対して行った耐熱老化試験(温度別×70時間)のデータは以下のとおりです。尚、フロロパワー3FHは300℃で、比較用で同時に試験を行ったFKM-70 (4D)は270℃で、それぞれ破損してしまったことからそれ以上の測定が継続できませんでした。
耐熱老化試験(温度別×70時間)データ
フロロパワーFFS
(耐熱330℃クラス)
フロロパワーFFSW
(耐熱330℃クラス)
フロロパワーFFHW
(耐熱280℃クラス)
フロロパワーFFH90
(耐熱280℃クラス)
フロロパワーAPHW
(耐熱270℃クラス)
フロロパワー3FH
(耐熱250℃クラス)
FKM-70(4D)
(耐熱230℃クラス)
<RGDテスト−桜シール> | |
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概要) 棒状の試験片について、容器内で加熱及び加圧後に急速減圧し、外部や内部に発生する亀裂やくぼみ、膨らみを観察する。 | |
条件) 試験片:φ10×30L 及び φ6×30Lの2種類 充填ガス:He 温度:300℃(2時間保持のこと) 圧力:10MPa 減圧速度:10MPa/秒 減圧回数:2回 圧力保持:24時間 中間放置:無し(0時間) |
<RGDテスト−ISO23936-2:2011> | ||
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概要) Oリング試験片について、溝に装着して内側を加圧後に急速減圧し、内部(Oリング断面)に発生する亀裂やくぼみ、膨らみを観察して評価する。 | ||
条件) 試験片:Oリング AS568-312 充填ガス:CH₄/CO₂=9:1 , N₂/CO₂=9:1 温度:100℃±2 圧力:15MPa±2 減圧速度:2MPa/分 減圧回数:8回 圧力保持:68時間 中間放置:各1時間 装着溝充填率:85% Oリングつぶし率:15% n数:4個 |
フロロパワーFFH90の測定値
試験種類 | 項目 | フロロパワーFFH90 |
---|---|---|
常態物性試験 | 硬さ(JIS-A) | 93 |
引張強さ(MPa) | 23.3 | |
伸び率(%) | 100 | |
100%引張応力(MPa) | 23.3 | |
耐熱老化試験 | 試験条件 | 230℃×70時間 |
硬さ変化 | 0 | |
引張強さ変化率(%) | -2 | |
伸び変化率(%) | +4 | |
圧縮永久歪み試験 | 試験条件 | 200℃×70時間 |
圧縮永久歪み率(%) | 16 |
使用温度範囲
推奨値は0〜280℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪化する為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。
圧力特性
推奨最高圧力は10MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性はバックアップリングの併用で向上させることが出来ます。
耐薬品性
殆ど全ての薬品に耐性があり、あらゆる薬品に使用することが出来ます。Oリングの耐薬品性(接触流体と材質の適合性)に於いてより多くの液体や気体に対する耐久性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。
薬品名 | 耐性 | 薬品名 | 耐性 |
---|---|---|---|
アセトアルデヒド | ◎ | ジメチルアセトアミド | ◎ |
アセトン | ◎ | ジブチルエーテル | ◎ |
アニリン | ◎ | 重油 | ◎ |
アンモニア水 | ◎ | シンナー | ◎ |
IPA | ◎ | スピンドル油 | ◎ |
エタノール | ◎ | 100℃水蒸気 | ◎ |
エチレングリコール | ◎ | テトラクロロエチレン | 〇 |
エチレンジアミン | ◎ | テトラヒドロフラン | ◎ |
N-メチル-2-ピロリドン | ◎ | 灯油 | ◎ |
エマルジョン系作動油 | ◎ | トリクロロエチレン | 〇 |
塩酸 | ◎ | トルエン | ◎ |
エンジン油 | ◎ | 動物油 | ◎ |
王水 | ◎ | ブチルアセテート | ◎ |
過酸化水素水 | ◎ | フッ酸 | ◎ |
苛性カリ | ◎ | フレオンR134a | × |
苛性ソーダ | ◎ | フッ素オイル | × |
ガソリン | ◎ | ブレーキ油 | ◎ |
カップグリス | ◎ | ヘキサン | ◎ |
ギヤ油 | ◎ | ベンゼン | ◎ |
キシレン | ◎ | ホルマリン | ◎ |
軽油 | ◎ | マシン油 | ◎ |
クロロホルム | ◎ | 水 | ◎ |
ケロシン | ◎ | 水系切削油 | ◎ |
酢酸 | ◎ | メタノール | ◎ |
酢酸エチル | ◎ | MEK | ◎ |
硝酸 | ◎ | メチルイソブチルケトン | ◎ |
植物油 | ◎ | モノエタノールアミン | ◎ |
次亜塩素酸ソーダ | ◎ | ラッカー | ◎ |
ジオキサン | ◎ | りん酸エステル系作動油 | ◎ |
四塩化炭素 | 〇 | 硫酸 | ◎ |
ジクロロメタン | ◎ | リチウムグリス | ◎ |
シリコングリス | ◎ | 鉱油系冷凍機油 | ◎ |
◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可
注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。
主な使用箇所
取扱注意点
〒130-0021
東京都墨田区緑3丁目4番10号
桜シール本社ビル