フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属する3元系(3元共重合体)フッ素ゴム材質の耐圧タイプであるフロロパワー3F90(Fluoro-Power 3F90/FP-3F90)は、強酸や蒸気(スチーム)に対する耐性を含む優秀な耐薬品性を有しながら、硬度が高く良好な耐圧性も兼ね備えているOリング用のゴム材質です。一般的なフッ素ゴム(FKM)よりも物性が勝っている3元系フッ素ゴムを原材料として、高圧力や急速減圧に対する耐久性能を強化しています。特に耐ブリスター性(防爆性)については、RGDテスト規格ISO-23936-2(英国)の公的認証を取得しており、石油や天然ガスの掘削機械などで良好な性能を発揮します。尚、高硬度であることから低圧シールには適していない他、伸び率が低いことを考慮し、円筒面への装着時にはOリングに対して無理な力を掛けることが無いように注意が必要です。
* フロロパワー3F90は、RGDテストに合格(ISO 23936-2認証取得)しているAED材質です。
* Oリング以外でも様々な形状の製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
* フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。
化学構造
2フッ化ビニリデン・6フッ化プロピレン・4フッ化エチレン3元共重合体です。3元系FKMの通称で呼ばれ、一般的なフッ素ゴムである2元系FKMとは異なり、4フッ化エチレンが重合した構造で成り立っています。この構造によって2フッ化ビニリデン成分が少なくなるのでC-H結合が減り、C-F結合の割合は増加して化学的結合力が強化され、耐薬品性が向上しています。また、CF-CH2の結合が無くなることで加水分解にとても強くなり、2元系FKMでは弱点とされている蒸気(スチーム)に対する耐性が備わっています。
関連する法規制等
フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質は、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、ご使用の条件などを注意深くご確認ください。
フロロパワー3F90と耐ブリスター性(耐急速減圧破裂性)
耐ブリスター性に優れるグレード(フロロパワーFFH90及びフロロパワー3F90)に対して行ったRGDテストの結果は、以下の通りです。
<RGDテスト−桜シール> | |
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概要) 棒状の試験片について、容器内で加熱及び加圧後に急速減圧し、外部や内部に発生する亀裂やくぼみ、膨らみを観察する。 | |
条件) |
<RGDテスト−ISO23936-2:2011> | ||
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概要) Oリング試験片について、溝に装着して内側を加圧後に急速減圧し、内部(Oリング断面)に発生する亀裂やくぼみ、膨らみを観察して評価する。 | ||
条件) 試験片:Oリング AS568-312 充填ガス:CH4/CO2=9:1 , N2/CO2=9:1 温度:100℃±2 圧力:15MPa±2 減圧速度:2MPa/分 減圧回数:8回 圧力保持:68時間 中間放置:各1時間 装着溝充填率:85% Oリングつぶし率:15% n数:4個 |
フロロパワー3F90の測定値
試験種類 | 項目 | フロロパワー3F90 |
---|---|---|
常態物性試験 | 硬さ(JIS-A) | 94 |
引張強さ(MPa) | 24 | |
伸び率(%) | 100 | |
100%引張応力(MPa) | 24 | |
耐熱老化試験 | 試験条件 | 200℃×70時間 |
硬さ変化 | 0 | |
引張強さ変化率(%) | -2 | |
伸び変化率(%) | +5 | |
圧縮永久歪み試験 | 試験条件 | 200℃×70時間 |
圧縮永久歪み率(%) | 20 |
使用温度範囲
推奨値は0〜200℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪化する為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。
圧力特性
推奨最高圧力は10MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性はバックアップリングの併用で向上させることが出来ます。
耐薬品性
耐強酸性や耐蒸気性など、汎用の2元系フッ素ゴム(FKM-70ほか)では弱点とされている性能にも優れています。Oリングの耐薬品性(接触流体と材質の適合性)に於いてより多くの液体や気体に対する耐久性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。
薬品名 | 耐性 | 薬品名 | 耐性 |
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アセトン | × | ジメチルアセトアミド | × |
アニリン | ◎ | ジエチルエーテル | × |
アンモニア水 | △ | シンナー | × |
安息香酸 | ◎ | 150℃水蒸気 | ◎ |
IPA | ◎ | テトラクロロエチレン | △ |
エタノール | ◎ | テトラヒドロフラン | × |
エチレングリコール | ◎ | 灯油 | ◎ |
エチレンジアミン | × | トリクロロエチレン | △ |
N-メチル-2-ピロリドン | × | トルエン | 〇 |
塩酸 | ◎ | トリエチルアミン | × |
過酸化水素水 | ◎ | フッ酸 | ◎ |
苛性カリ | × | フレオン R134a | × |
苛性ソーダ | × | 不活性フッ素オイル | △ |
ガソリン | ◎ | ブレーキフルード(エーテル系) | × |
カップグリス | ◎ | ヘキサン | 〇 |
ギア油 | ◎ | ベンゼン | △ |
キシレン | △ | マシン油 | ◎ |
軽油 | ◎ | 水系切削油 | ◎ |
クロロホルム | △ | メタノール | 〇 |
ケロシン | ◎ | MEK | × |
酢酸 | × | メチルイソブチルケトン | × |
無水酢酸 | × | モノエタノールアミン | × |
酢酸エチル | × | ラッカー | × |
硝酸 | ◎ | りん酸エステル系作動油 | ◎ |
シクロヘキサノン | △ | 希硫酸 | ◎ |
次亜塩素酸ソーダ | 〇 | 硫酸 | ◎ |
四塩化炭素 | △ | リチウムグリス | ◎ |
シリコングリス | ◎ | LPG | ◎ |
◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可
注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。
主な使用箇所
取扱注意点
〒130-0021
東京都墨田区緑3丁目4番10号
桜シール本社ビル