フロロアップ(Fluoro-Up)®シリーズ−低粘着・低摩擦・低固着・低アウトガス/潤滑性フッ素ゴム材質

粘着性(大きな摩擦抵抗)や固着性(貼り付き)、アウトガス性など、Oリングをはじめとするシール材の使用上で問題になり易いゴム材質(加硫ゴム)の性質を抑制した特別なフッ素ゴム(FKM及びFFKM)材質の数々が、フロロアップ(Fluoro-Up)®シリーズです。シール材の粘着性を低減させる方法として代表的な表面処理(PTFE被膜/テフロンコートや研磨)は、シール材を機械に装着する際の作業性向上が目的である為、機械の作動後には効力を持続することが殆ど出来ません。従って、粘着性が動的部分に於いてシール材の作動に支障をきたしたり、固着性が開閉部に於いてシール材の脱落原因になったり、或いはOリングのローラー使用などに於いて転写現象が発生したりといったトラブルを解消することが目的である場合、表面処理のような追加工によって限定的な効力を付与したシール材ではなく、根本的な性能として低粘着性や低固着性を有しているゴム材質を用いたシール材の適用が推奨されます。フロロアップ(Fluoro-Up)®シリーズは、低粘着性、低摩擦性、低固着性、低アウトガス性、そして耐高真空性といった性能を複合的に保有する個々のラインナップで、細やかなニーズにお応えいたします。

* Oリング以外でも様々な形状の製品製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
* フロロアップ(Fluoro-Up)®は、桜シール株式会社の登録商標です。

図3.png
[フロロアップシリーズのラインナップ] 
フロロアップシリーズには機能別に以下のラインナップがございます。
材質名称
(材質No.)
材料系統
(ASTM)
フロロアップ特性
低粘着 低摩擦 低固着 低アウトガス 耐高真空
フロロアップD
(2507)
2元系フッ素ゴム
(FKM)
× ×
フロロアップK
(2517)
2元系フッ素ゴム
(FKM)
× ×
フロロアップS
(2527)
2元系フッ素ゴム
(FKM)
×
フロロアップV
(2537)
3元系フッ素ゴム
(FKM)
フロロアップFFEX
(2548)
パーフロ
(FFKM)
 
FKM-70(4D)
(2007)
2元系フッ素ゴム
(FKM)
× × × ×
フロロパワーFF
(7008)
パーフロ
(FFKM)
× × × ×
フロロアップD
低固着性と低アウトガス性に優れた、Oリング等のシール製品に最適な材質です。長時間接触による貼り付きを軽減し、周囲の条件によりゴムから放出される炭化水素系ガスやフッ素ガス類を大幅に削減しております。但し長期間放置すると、空気中の成分と反応して双方の特性が低下してしまうので、速やかに使用しなければなりません。また摩擦抵抗の軽減には効果がありません。
 
* 食品衛生法(厚生労働省告示第595号 旧厚生省告示第370号 ゴム製の器具又は容器包装)に適合しています。
* RoHS指令10物質(Pb, Cd, Hg, Cr6+, PBB, PBDE, DEHP, BBP, DBP, DIBP)の含有量は閾値以下です。
* REACH規制対象物質の意図的添加はいたしておりません。
* TSCA PBT5物質(DecaBDE、2,4,6TTBP、PIP(3:1)、HCBD、PCTP)の意図的な添加は行っておりません。
 
 
フロロアップK
低粘着性により動的部分での摩擦抵抗軽減等に大きく貢献できる、Oリング等のシール製品に最適な材質です。但し低固着性は有していないので、長時間接触による貼り付きについては他のフロロアップシリーズに比べて劣ります。またガス透過性が高くなることから高真空での使用には適しません。
 
* 食品衛生法(厚生労働省告示第595号 旧厚生省告示第370号 ゴム製の器具又は容器包装)に適合しています。
* RoHS指令10物質(Pb, Cd, Hg, Cr6+, PBB, PBDE, DEHP, BBP, DBP, DIBP)の含有量は閾値以下です。
* REACH規制対象物質の意図的添加はいたしておりません。
* TSCA PBT5物質(DecaBDE、2,4,6TTBP、PIP(3:1)、HCBD、PCTP)の意図的な添加は行っておりません。
 
 
フロロアップS
低粘着性、低固着性、低アウトガス性の全てを有する、Oリング等のシール製品に最適な材質です。最大の特徴は空気中の物質と再反応してアウトガス性が低下する作用を止める効果があり、長期間にわたり放置しても全ての機能が持続されるという点です。 但し、フロロアップKと同じくガス透過性が高くなりますので高真空での使用には適していません。
 
* 食品衛生法(厚生労働省告示第595号 旧厚生省告示第370号 ゴム製の器具又は容器包装)に適合しています。
* RoHS指令10物質(Pb, Cd, Hg, Cr6+, PBB, PBDE, DEHP, BBP, DBP, DIBP)の含有量は閾値以下です。
* REACH規制対象物質の意図的添加はいたしておりません。
* TSCA PBT5物質(DecaBDE、2,4,6TTBP、PIP(3:1)、HCBD、PCTP)の意図的な添加は行っておりません。
 
 
フロロアップV
フロロアップDが使用できない高温環境に於き、フロロアップKやフロロアップSが使用できない高真空に対応可能な、Oリングなどのシール部材に最適な材質です。特殊な方法を用い、耐熱性とガスバリア性の両立を実現しています。フロロアップSと比較して低粘着性は若干下がりますが、一般的な材質と比較すれば、優れた低粘着性や低固着性を有しております。
 
* RoHS指令10物質(Pb, Cd, Hg, Cr6+, PBB, PBDE, DEHP, BBP, DBP, DIBP)の含有量は閾値以下です。
* REACH規制対象物質の意図的添加はいたしておりません。
* TSCA PBT5物質(DecaBDE、2,4,6TTBP、PIP(3:1)、HCBD、PCTP)の意図的な添加は行っておりません。
 
 
フロロアップFFEX
フロロアップシリーズでは唯一の、パーフルオロエラストマー(FFKM)による材質です。低粘着性と低摩擦性に優れ、且つ基材である耐熱強化型のFFKMに由来する秀でた耐薬品性耐熱性を有しています。また、従来はガスバリア性に劣るFFKM材ですが、特殊な製法を用いることで若干の良化が図られています。
 
* RoHS指令10物質(Pb, Cd, Hg, Cr6+, PBB, PBDE, DEHP, BBP, DBP, DIBP)の含有量は閾値以下です。
* REACH規制対象物質の意図的添加はいたしておりません。
* TSCA PBT5物質(DecaBDE、2,4,6TTBP、PIP(3:1)、HCBD、PCTP)の意図的な添加は行っておりません。
 

[フロロアップシリーズ諸元] 
■耐薬品性

材質名称
(材質 No.)
温度範囲の目安 耐薬品性
(◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可)

低温側
耐寒性

高温側
耐熱性

燃料油 水蒸気 硫酸 アンモニアガス 苛性ソーダ エタノール
フロロアップD
(2507)
-20℃ +230℃ × ×
フロロアップK
(2517)
0℃ +230℃ × ×
フロロアップS
(2527)
0℃ +230℃ × ×
フロロアップV
(2537)
0℃ +250℃
フロロアップFFEX
(2548)
0℃ +280℃
物性(測定値)
材質名称
(材質No.)
物性(機械的性質)
項目 硬さ 引張強さ 伸び率 100%引張応力 圧縮永久歪み
単位 JIS-A MPa MPa
試験条件 JIS K6253 JIS K6251 JIS K6262
フロロアップD
(2507)
70 13.2 250 4.08 24
(200℃×70h)
フロロアップK
(2517)
71 9.1 170 5.03 25
(200℃×70h)
フロロアップS
(2527)
70 11.6 190 5.06 24
(200℃×70h)
フロロアップV
(2537)
74 12.5 205 4.95 32
(200℃×70h)
フロロアップFFEX
(2548)
 
85 22.4 175 10.10 18
(200℃×70h)
25
(250℃×70h)
 
FKM-70(4D)
(2007)
69 13.3 250 4.48 23
(200℃×70h)
フロロパワーFF
(7008)
77 21 195 7.7 14
(200℃×70h)
フロロアップ特性(低粘着性、低摩擦性、低固着性)
材質名称
(材質No.)



項目 粘着力 固着力 粘着力+固着力 動摩擦係数
試験片 Oリング P-26 Oリング P-26 Oリング P-26 シート
相手材 アルミ アルミ アルミ SUS304
温度×時間 200℃×22時間 常温×60日 200℃×22時間
+
常温×60日
JIS K7125
単位 kgf kgf kgf
フロロアップD
(2507)
3.60 0.07 4.50 1.79
フロロアップK
(2517)
0.14 0.13 0.90 0.86
フロロアップS
(2527)
0.10 0 0.50 0.62
フロロアップV
(2537)
0.13 0.08 0.80 0.89
フロロアップFFEX
(2548)
- - - 0.50
FKM-70(4D)
(2007)
4.16 0.28 25.40 1.79
フロロパワーFF
(7008)
- - 1.62
真空性能
ガス透過性の高いフロロアップKとフロロアップSは、高真空用途には適しません。
材質名称
(材質No.)
Heリークレート(Pa・㎥/s)
<真空バルブにて測定>
ガス透過係数(×10-8㏄・㎝/㎠,sec,atm)
H2 He N2 O2 CO2 CH4
フロロアップD
(2507)
1×10-11以下 4.56 2.87 0.7 0.9 3.5 0.3
フロロアップK
(2517)
1×10-5以下 400以上 400以上 260.0 400以上 400以上 400以上
フロロアップS
(2527)
1×10-5以下 400以上 400以上 270.0 400以上 400以上 400以上
フロロアップV
(2537)
1×10-9以下 6.3 4.6 2.2 1.5 - -
フロロアップFFEX
(2548)
- - - - - - -
FKM-70(4D)
(2007)
1×10-11以下 4.6 2.95 0.8 1.0 3.9 0.6
フロロパワーFF
(7008)
- 8.25 10.3 8.1 2.5 28.7 3.3

放出ガス量の経時変化

フロロアップ-放出ガス量の経時変化グラフ.png

注意

  • 保管の際には冷暗所に梱包した状態で保存ください。特にフロロアップDは放置すると特性が劣化しますので速やかにご使用ください。
  • 記載したデータは実測値であり規格値ではありません。
  • ご使用の際には事前にテストを行い、使用可否を判断されることをお勧めします。 

>>>材質の一覧(ラインナップと性能)
>>>材質名称の対比(規格/メーカー)