シール(Seal, 密封装置)

シールとは、流体(液体・気体・プラズマ)の漏れや、外部からの異物の侵入を防止する為に用いられる機械要素(部品)の総称です。日本工業規格(JIS B 0116:パッキン及びガスケット用語)では、シールをシール面との相対運動から大別し、パッキン(運動面シール)とガスケット(静止面シール)に分類しています。

シールの歴史を考えた場合、例えば水を汲み上げる過程など、古来よりシールが必要とされた場面が多々あったことは想像に難くありません。しかし、特に重要な機械要素として世界中で扱われるようになったのは、第二次世界大戦以降であると云われています。1930年以降に欧米で開発された合成ゴムやフッ素樹脂などの効果と、航空機や自動車、建設機械などの発達とが相乗的に重なって、シール製品は飛躍的な発展を遂げました。尚、日本では大戦を通じて革製のパッキンを使用していましたが、アメリカ合衆国のB29爆撃機には合成ゴム製のOリングが使用されていたことを知り、戦後になってMIL規格(米軍規格)のOリングに対する調査・研究が開始されました。但し、日本国内で合成ゴム製のOリングが実用化されたのは、ゴムの禁輸が解かれた1955年からです。それ以降、一般産業用に日本工業規格(JIS)が規格化を推進し、広く使用されるようになりました。

>>>パッキン・ガスケット 技術資料

 

シールの種類(パッキンとガスケットの違い)

シールという枠組みに於いて、パッキンとガスケットは慣用的に混同して使われることが多い名称ですが、実際にはそれぞれ定義が異なります。パッキンとは往復や回転といった運動面に用いられるシールのことを指し、一方、ガスケットとは静止面に用いられるシールのことを指しています。例えば、運動と固定(静止)の両用途で使われているOリングは、パッキンとガスケットの両方に属します。具体的には、パッキンとしては「接触型シール>セルフシール>スクイーズパッキン」のひとつに、ガスケットとしては「軟質ガスケット」のひとつに細分類されます。或いは、回転用で用いられるオイルシールはパッキンに属し、「接触型シール」のひとつに数えられます。一般に、摩擦などを考慮する必要性から複雑なシール機構を持つパッキンは、作動原理や形状から分類がなされます。しかし、殆ど全てのシール機構をスクイーズ(Squeeze=押し潰す/つぶし代)だけに拠っているガスケットは、材料の系統や種類から分類が行われています。従って、固定用途のOリングが「スクイーズガスケット」などと位置付けられることは無く、「エラストマー系Oリング」などと呼ばれることになります。このように分類項に係る仕分けの基準がパッキンとガスケットで異なっていることは、それらの名称が混同される一因になっているとも考えられます。

分類  代表的なシール製品
シール
(密封装置) 
パッキン
(運動面シール)
接触型シール セルフシール
(流体圧変形によるシール)
スクイーズパッキン
(つぶし代によるシール)
Oリング
スリッパーシール
(キャップシール)
Xリング
Tリング
Dリング
デルタリング
リップパッキン
(リップによるシール)
Uパッキン
(Yパッキン)
Vパッキン
Lパッキン
Jパッキン
・・・・・ オイルシール
・・・・・ Vリング
・・・・・ スクレーパ
(ワイパリング/
ダストシール)
・・・・・ ダイヤフラム
・・・・・ べローズ
・・・・・ メカニカルシール
・・・・・ グランドパッキン
・・・・・ ピストンリング
・・・・・ フェルトリング
非接触型シール ・・・・・ 磁性流体シール
・・・・・ ラビリンスシール
・・・・・ ビスコシール
ガスケット
(静止面シール)
軟質ガスケット ・・・・・ Oリング
・・・・・ 真空ガスケット
(角リング)
(甲丸リング)
(甲山リング)
・・・・・ フランジガスケット
(ゴムシートガスケット)
(ジョイントシートガスケット)
(PTFEソリッドガスケット)
(PTFE包みガスケット)
(織布ガスケット)
(紙ガスケット)
・・・・・ テフロン被覆Oリング
・・・・・ NWセンターリング/Oリング
(KFセンターリング/Oリング)
・・・・・ ヘルールガスケット
(サニタリーガスケット)
・・・・・ 液状ガスケット
金属ガスケット ・・・・・ メタルガスケット
・・・・・ セミメタリックガスケット
・・・・・ ゴムコートガスケット