Vリングとは、回転軸で用いられるシール製品、所謂オイルシールの一種です。但し、一般的なオイルシールとはリップの向きが異なり、本体とヒンジ状に連結したリップにより、軸受けの端面に於いてシールを行います。金属や繊維などの補強材を含まない純粋なゴム製品であることから、ゴム材質の伸縮性を利用した取り付けが可能です。また、軸への固定はゴム弾性による張力で行われる為、ハウジングを必要としません。尚、リップの応力は非常に弱く、圧力が掛かる箇所には不向きなほか、高速回転軸では遠心力による影響を受けてしまいます。桜シール株式会社は、ゴム材質に係る幅広い知見を活かし、様々なVリングを販売いたします。
* 往復運動用パッキンの一種であるVパッキンは、Vリングとは別の製品です。
Vリングの型式(形状の規格)とサイズ(寸法表)
Vリングの型式は、1960年代にVリングを考案したフォーシェダ社(現在はトレルボルググループに所属)の掲げる8種類の規格をベースとしているものが大半を占めており、その中でも日本国内で流通しているものは、Aタイプと呼ばれる標準タイプが殆どです。下表は、主要なメーカーによるVリングの互換(相当)型式とそれぞれの寸法表をまとめたものです。Vリング選定の参考として活用して下さい。
尚、桜シールの基幹製品はOリングである為、全ての型式を網羅したVリング金型は保有していません。生産量や入手性の観点から社内生産を行うべきであると判断したものから、金型の増面を行っております。通常は、安定した品質が確保されている以下の主要メーカー製品をお薦めし、また販売させて頂きます。
Vリング(端面シール)の規格一覧表 | |||||
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SAKURA 桜シール | FORSHEDA トレルボルグシーリングソリューションズ (フォーシェダ) | NOK NOK | KOYO ジェイテクト (光洋) | TOYO 東洋オイルシール |
Vリング S | Sタイプ (寸法表) | - | - | - |
Vリングの材質
Vリングに用いられるゴム材質には、Oリング用で求められるような物性はあまり必要とされず、ゴム弾性によるリップ部やヒンジ部の復元力が最も重視されます。従って、温度環境とシール対象物の種類を中心に耐性を勘案し、選定を行うのが一般的です。尚、高温環境に於ける熱老化や、低温環境に於けるガラス転移(高分子が活性を失って硬くなること)、シール対象からの悪影響(膨潤や分解、抽出)といった現象に係るゴム材質の変化メカニズムは、Oリングのゴム材質と同じ理論で説明することが出来ます。Oリング材質の耐熱性や耐寒性、耐油性、耐薬品性、耐候性(耐オゾン性)などの項も参考にして下さい。
Vリングに用いられる主な材質の一覧 | ||||
種類/材料系統 | 温度範囲の目安 | 特徴 | ||
低温側 | 高温側 | |||
汎 用 ゴ ム 材 質 | −30℃ | +100℃ | Vリングに用いられるゴム材質では、最も広く使用されている一般的な材質です。安価であり、鉱物油に対する耐性を有し、また耐摩耗性にも優れています。 | |
−20℃ | +230℃ | Vリングに用いられるゴム材質に於いては、非常に性能の高い材質です。耐熱性や耐油性、耐薬品性、耐候性などを兼ね備え、広範囲に使用することが出来ます。 | ||
−30℃ | +100℃ | ニトリルゴムと同程度の耐油性を有し、耐候性も備えているゴム材質です。通常は、より安価なニトリルゴムか、より性能の高いフッ素ゴムが選択されます。 | ||
−50℃ | +200℃ | 耐熱性や耐寒性、耐候性などに優れたゴム材質ですが、鉱物油などに対する耐性は、ニトリルゴムやフッ素ゴムよりも劣ります。水や動植物油などに適しています。 | ||
−40℃ | +130℃ | 耐薬品性や耐候性などに優れたゴム材質ですが、鉱物油などに対する耐性は、ニトリルゴムやフッ素ゴムよりも劣ります。水や動植物油などに適しています。 |
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