Oリングをはじめとするシール(パッキン・ガスケット)製品を形作るゴムの原材料、つまりゴム材質(加硫ゴム/Oリング材質)の原材料(原料ゴム及び配合剤)についてのまとめです。シール製品に用いられる主だった原料ゴム(ポリマー)を一覧で提示し、また一般的な配合剤とその種類や役割も併載いたします。シール製品の選定などに係る参考資料として、お役立て下さい。
ゴム材質(加硫ゴム/Oリング材質)は、その特性に最も強い影響を与える原料ゴム(ポリマー/ゴム材料)と、しばしば混同されます。しかし原料ゴムのままの状態では、ゴム材質に見られる弾性体としての強度や復元性、伸縮性などは殆どありませんので、シール製品を正常に作動させること(参考: Oリングの原理、オイルシールの原理)は出来ません。原料ゴム(ポリマー)に配合剤(充填材や架橋剤など)を最適な配分で練り合わせて(混練して)配合ゴム(ゴムコンパウンド)と呼ばれる状態にし、そこへ更に加硫(架橋反応)を促すことで、初めてゴム弾性などを有する状態、つまりゴム材質となるのです。配合や加硫の条件、言い換えれば配合技術や成形技術の差によって、例え同一の原料ゴムを用いたゴム材質であっても性能に大きな差を生じることも考えられるので、Oリングなどの製品を選定する際には両者の違いを把握しておく必要があります。
>>>ゴム材質(Oリング材質)
原料ゴム(ポリマー)
Oリングなどのシール製品に用いられる代表的な原料ゴム(ポリマー)は、以下の通りです。どの原料ゴムにも主鎖や側鎖に加硫(架橋反応)の際に必要となる反応点が導入されています。また、フッ素系統のもの(FKMやFEPM、FFKMなど)やシリコン系統のもの(VMQなど)を除き、多くの合成ゴムが石油(ナフサ)を主原料としています。
ASTM:American Society for Testing and Materials/アメリカ合衆国の材料試験協会
ASTM D 1418:Standard Practice for Rubber and Rubber Latices−Nomenclature
ISO:International Organization for Standardization/国際標準化機構
ISO 1629:Rubbers and Latices−Nomenclature
JIS:Japanese Industrial Standards/日本工業規格
JIS K 6397:原料ゴム及びラテックスの略号
Rグループ:主鎖に不飽和炭素結合を持つゴム
Rグループとは、ゴムの分類に係る略号(ASTM D 1418/ISO 1629/JIS K 6397)に於いて、その末尾がRと規定されている原料ゴムの集まりです。通常、略号は化学名や化学構造を英語表示した際の頭文字によって構成されており、RはRubber(ゴム)の頭文字であると同時に、主鎖に不飽和炭素結合を持つゴムであることを指しています。
>>>ゴム材質(Oリング材質)
原料ゴム−水素化ニトリルゴム(HNBR) |
【HNBR】
アクリロニトリルと水素化した
ブタジエンのランダム共重合体
名称 | 和名 | 水素化ニトリルゴム |
英名 | Hydrogenated Acrylo-Nitrile-Butadiene Rubber | |
別称 | 和名 | 水添NBR |
英名 | Hydrogenated NBR | |
略号 | HNBR * ゴムの分類記号(ASTM D 1418/ISO 1629/JIS K 6397) R:主鎖に不飽和炭素結合を持つゴム |
原料ゴム−スチレンブタジエンゴム(SBR) |
【SBR】
スチレンとブタジエンのランダム共重合体
名称 | 和名 | スチレンブタジエンゴム |
英名 | Styrene-Butadiene Rubber | |
略号 | SBR * ゴムの分類記号(ASTM D 1418/ISO 1629) R:主鎖に不飽和炭素結合を持つゴム |
原料ゴム−ブチルゴム(IIR) |
【IIR】
イソブテン(イソブチレン)とイソプレンの共重合体
名称 | 和名 | ブチルゴム |
英名 | Butyl Rubber | |
別称 | 和名 | イソブテンイソプレンゴム |
英名 | Isobutene-Isoprene Rubber | |
略号 | IIR * ゴムの分類記号(ASTM D 1418/ISO 1629) R:主鎖に不飽和炭素結合を持つゴム |
原料ゴム−天然ゴム(NR)及びイソプレンゴム(IR) |
【NR・IR】
ポリイソプレン
名称 | 和名 | 天然ゴム |
英名 | Natural Rubber | |
別称 | 和名 | イソプレンゴム |
英名 | Isoprene Rubber | |
略号 | NR・IR * ゴムの分類記号(ASTM D 1418/ISO 1629) R:主鎖に不飽和炭素結合を持つゴム |
Mグループ:ポリメチレンタイプの飽和主鎖を持つゴム
Mグループとは、ゴムの分類に係る略号(ASTM D 1418/ISO 1629/JIS K 6397)に於いて、その末尾がMと規定されている原料ゴムの集まりです。通常、略号は化学名や化学構造を英語表示した際の頭文字によって構成されており、Mはポリメチレンタイプの飽和主鎖を持つゴムであることを指しています。
>>>ゴム材質(Oリング材質)
名称 | 和名 | フッ素ゴム (2元系/3元系) |
英名 | Fluoro Rubber (Bipolymer/Terpolymer) | |
別称 | 和名 | ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム (2元重合体/3元重合体) |
英名 | Copolymers of Vinylidene Fluoride (Bipolymer/Terpolymer) | |
略号 | FKM(ASTM)、FPM(ISO/DIN) * ゴムの分類記号(ASTM D 1418/ISO 1629/JIS K 6397) M:ポリメチレンタイプの飽和主鎖を持つゴム |
ゴム材料(原料ゴム)−フッ素ゴム(FKM)
ゴム材質(加硫ゴム)−フッ素ゴム(2元系FKM)
ゴム材質(加硫ゴム)−フッ素ゴム(3元系FKM)
原料ゴム−テトラフルオロエチレン−プロピレン系フッ素ゴム(FEPM) |
【FEPM】
4フッ化エチレンとプロピレンの2元共重合体
名称 | 和名 | テトラフルオロエチレン−プロピレン系フッ素ゴム |
英名 | TetraFluoroEthylene-Propylene Rubber | |
通称 | 和名 | アフラス |
英名 | AFLAS | |
略号 | FEPM * ゴムの分類記号(ASTM D 1418/ISO 1629/JIS K 6397) M:ポリメチレンタイプの飽和主鎖を持つゴム |
原料ゴム−アクリルゴム(ACM) |
【ACM】
アクリル酸エステルと塩素系モノマーの共重合体
* R=メチル基/ブチル基/メトキシエチル基
名称 | 和名 | アクリルゴム |
英名 | Acrylic Rubber | |
略号 | ACM * ゴムの分類記号(ASTM D 1418/ISO 1629/JIS K 6397) M:ポリメチレンタイプの飽和主鎖を持つゴム |
原料ゴム−クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM) |
【CSM】
エチレン及びクロロスルフォン化エチレン、塩素化エチレンの非結晶性重合体
名称 | 和名 | クロロスルフォン化ポリエチレン |
英名 | Chlorosulfonyl Polyethylene | |
通称 | 和名 | ハイパロン |
英名 | Hypalon | |
略号 | CSM * ゴムの分類記号(ASTM D 1418/ISO 1629/JIS K 6397) M:ポリメチレンタイプの飽和主鎖を持つゴム |
Qグループ:主鎖に珪素と酸素を持つゴム
Qグループとは、ゴムの分類に係る略号(ASTM D 1418/ISO 1629/JIS K 6397)に於いて、その末尾がQと規定されている原料ゴムの集まりです。通常、略号は化学名や化学構造を英語表示した際の頭文字によって構成されており、Qは主鎖に珪素と酸素を持つゴムであることを指しています。
>>>ゴム材質(Oリング材質)
原料ゴム−フロロシリコンゴム(FVMQ) |
【FVMQ】
メチルトリフルオロプロピルシロキサンとメチルビニルシロキサンの重合物
名称 | 和名 | フロロシリコンゴム |
英名 | FluoroSilicone Rubber | |
別称 | 和名 | フルオロプロピルメチルビニルシリコーンゴム |
英名 | FluoroPropylMetylVinyl Silicone Rubber | |
略号 | FVMQ * ゴムの分類記号(ASTM D 1418/ISO 1629/JIS K 6397) Q:主鎖に珪素と酸素を持つゴム |
Oグループ:主鎖に炭素と酸素を持つゴム
Oグループとは、ゴムの分類に係る略号(ASTM D 1418/ISO 1629/JIS K 6397)に於いて、その末尾がOと規定されている原料ゴムの集まりです。通常、略号は化学名や化学構造を英語表示した際の頭文字によって構成されており、Oは主鎖に炭素と酸素を持つゴムであることを指しています。
>>>ゴム材質(Oリング材質)
原料ゴム−パーフルオロポリエーテルエラストマー(FFKO) |
【FFKO】
フッ素化ポリエーテル骨格のシリコーン架橋反応による重合体
名称 | 和名 | パーフルオロポリエーテルゴム |
英名 | Perfluoropolyether Rubber | |
別称 | 和名 | サイフェル |
英名 | SIFEL | |
略号 | FFKO * ゴムの分類記号(ASTM D 1418/ISO1629/JIS K 6397) O:主鎖に炭素と酸素を持つゴム |
原料ゴム−エピクロロヒドリンゴム(ECO) |
【ECO】
エピクロロヒドリンとエチレンオキシドの2元共重合体
名称 | 和名 | エピクロロヒドリンゴム |
英名 | Epichlorohydrin Rubber | |
別称 | 和名 | エチレンオキシド-エピクロロヒドリン2元共重合体 |
英名 | Ethylene Oxide-Epichlorohydrin Copolymer | |
略号 | ECO * ゴムの分類記号(ASTM D 1418/ISO1629/JIS K 6397) O:主鎖に炭素と酸素を持つゴム |
Uグループ:主鎖に炭素と酸素、窒素を持つゴム
Uグループとは、ゴムの分類に係る略号(ASTM D 1418/ISO 1629/JIS K 6397)に於いて、その末尾がUと規定されている原料ゴムの集まりです。通常、略号は化学名や化学構造を英語表示した際の頭文字によって構成されており、Uは主鎖に炭素と酸素、窒素を持つゴムであることを指しています。
>>>ゴム材質(Oリング材質)
原料ゴム−ウレタンゴム(AU) |
【AU】
ポリエステルと芳香族イソシアネートとジアミン化合物の3元縮合物
* R=ポリエステル
名称 | 和名 | ウレタンゴム |
英名 | Urethane Rubber | |
別称 | 和名 | ポリエステルウレタン |
英名 | Polyester Urethane | |
略号 | AU、U * ゴムの分類記号(ASTM D 1418/ISO 1629) U:主鎖に炭素と酸素、窒素を持つゴム |
原料ゴム−ウレタンゴム(EU) |
【EU】
ポリエーテルと芳香族イソシアネートとジアミン化合物の3元縮合物
* R=ポリエーテル
名称 | 和名 | ウレタンゴム |
英名 | Urethane Rubber | |
別称 | 和名 | ポリエーテルウレタン |
英名 | Polyether Urethane | |
略号 | EU、U * ゴムの分類記号(ASTM D 1418/ISO 1629) U:主鎖に炭素と酸素、窒素を持つゴム |
配合剤
Oリングなどのゴム製品に用いられる代表的な配合剤は、下表の通りです。冒頭でも述べた通り、ゴム材質(加硫ゴム/Oリング材質)は、原料ゴム(ポリマー)に配合剤を練り合わせて配合ゴム(コンパウンド)を製作した上で、加硫(架橋反応)を促すことで初めて完成します。ここでは、物性や加工性、価格優位性などの向上を目的として添加される充填材(フィラー)をはじめとして、様々な配合剤の種類や役割を掲載いたします。
配合剤 | 主な役割 | 具体例 |
充填材(補強性) | 強度の向上、高硬度化 | カーボンブラック、二酸化ケイ素(シリカ) |
充填材(非補強性) | 体積の増加、加工性の良化 | クレー、タルク、炭酸カルシウム |
可塑剤(軟化剤) | 軟化、加工性の良化 | パラフィン、油類、液状ゴム |
架橋剤(加硫剤) | 原料ゴムの反応点同士を結合 | 硫黄、有機過酸化物 |
加硫促進剤 | 架橋剤効果の早期化 | 有機加硫促進剤 |
架橋助剤 | 加硫促進剤の補助 | 酸化亜鉛、ステアリン酸、トリアリルイソシアネート |
老化防止剤 | 原料ゴムの酸化防止(架橋保護) | アミン系化合物、フェノール系化合物 |
加工助剤 | 金型離型性の良化、加工性(流動性など)の良化 | ワックス類、脂肪酸類 |
受酸剤 | 加硫の安定化(加硫時に発生する酸化物の吸収) | 酸化鉛、酸化マグネシウム、酸化亜鉛 |
顔料 | 着色 | 酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン化合物 |
>>>ゴム材質(Oリング材質)
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