フロロパワーFFSW(耐熱・白色 FFKM/パーフロ)の概要

フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属するFFKM(パーフロ)ゴム材質の耐熱白色タイプであるフロロパワーFFSW(Fluoro-Power FFSW/FP-FFSW)は、原材料パーフルオロエラストマー(FFKM)が用いられているOリング用の各種ゴム材質の中でも、耐熱黒色タイプのフロロパワーFFSと並ぶ上級グレードの高機能ゴム材質です。耐熱パーフロ(白色)の旧グレードであるフロロパワーFFHWと比較して全ての性能が勝っており、330℃クラスの耐熱性と極めて優秀な耐薬品性を兼ね備え、更に機械的性質を犠牲にすることなくノンカーボン化を実現しています。

フロロパワーFFSWは、半導体をはじめとする電子産業での高温プラズマ環境に於いてプロセス品質を向上させ、且つOリングの長期間に亘る使用を可能とする性能を有しています。特にCVDプロセスや拡散プロセスで重視される高温やラジカル、腐食性ガスに対する耐久性能が秀でていることが、プロセスへの影響、並びにOリングの交換頻度を最小限に抑えることに直接的に寄与し、延いては全体的な生産効率の向上に貢献いたします。また、高温条件下に於いてもゴム弾性を力強く維持できるだけでなく、耐圧性をはじめとする機械的性質にも優れていることから、電子産業に限らず幅広い分野で活躍できる素質を持った特別なゴム材質です。

尚、プラズマ環境下では微妙な相性が寿命を大きく左右いたします。フロロパワーFFSWはハロゲンプラズマ(フッ素ラジカルや塩素ラジカル、臭素ラジカル等)環境下に於いてフロロパワーAPHWフロロパワーFFSWなどと並んで非常に有効な選択肢のひとつである反面、酸素ラジカル環境下ではフロロパワーFFTといった別系統の専用材質が望まれます。また、開閉運動が繰り返される箇所のシール部材といった特定の動的用途では、最高耐熱温度や一部の耐薬品性が若干劣るフロロパワーFFCSの方が効果的な場合もあります。使用可能な材質が複数あるケースでも、より適切なものの選択を推奨いたします。

 
 
* Oリング以外でも様々な形状の製品製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
 
* フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。

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>>>材質の一覧(ラインナップと性能)
>>>材質名称の対比(規格/メーカー)

CSM:Cure Site Monomer

化学構造

4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルエーテル共重合物です。主鎖の全てがフッ素結合(C−F)で炭化水素結合(C−H)が無いことから、非常に優れた耐薬品性や耐熱性を有します。全体的に殆どフッ素化されている構造から架橋が難しい為、補助脚としてCSMが付加されています。

 

関連する法規制等

  • RoHS指令10物質(Pb, Cd, Hg, Cr6+, PBB, PBDE, DEHP, BBP, DBP, DIBP)の含有量は閾値以下です。
  • REACH規制対象物質の意図的添加はいたしておりません。
  • TSCA PBT5物質(DecaBDE、2,4,6TTBP、PIP(3:1)、HCBD、PCTP)の意図的な添加は行っておりません。

フロロパワーFFSW(耐熱・白色 FFKM/パーフロ)の特性値や物性値

フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質には、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、使用条件などを注意深く確認して下さい。

 

フロロパワーFFSWと高温×長時間(300℃×670時間)耐熱老化試験 

耐熱FFKMの上位2グレード(フロロパワーFFSG、及びフロロパワーFFSW)に対し、特殊条件(300℃×最長670時間)による耐熱老化試験を実施いたしました。データは以下の通りとなります。

  硬度変化の推移

  引張強さ変化の推移

   伸び変化の推移

FP-FFSG長時間耐熱老化試験(硬度).png
FP-FFSG長時間耐熱老化試験(引張強さ).png
FP-FFSG長時間耐熱老化試験(伸び率).png
凡例(FP-FFSG,FP-FFSW).png

フロロパワーFFSWと温度別(25〜380℃)耐熱老化試験

耐熱FFKMの上位2グレード(フロロパワーFFSG、及びフロロパワーFFSW)に対して行った耐熱老化試験(温度別×2時間)のデータは以下のとおりです。

  硬度変化の推移

  引張強さ変化の推移

  伸び変化の推移

FP-FFSG_温度別耐熱老化試験(硬度).png
FP-FFSG_温度別耐熱老化試験(引張強さ).png
FP-FFSG_温度別耐熱老化試験(伸び率).png
凡例(FP-FFSG,FP-FFSW).png

フロロパワーFFSWと長時間(1000時間)耐熱老化試験

トップグレードの耐熱パーフロ(フロロパワーFFS及びフロロパワーFFSW)専用の特殊条件(260℃×最長1000時間)による耐熱老化試験のデータは、以下の通りです。尚、比較用で同時に試験を行ったFKM-70(4D)については、1000時間未満で破損してしまった為、測定不能となりました。

  硬さ変化の推移

  引張強さ変化の推移

  伸び変化の推移

フロロパワーFFSW-硬さ変化の推移.jpg

フロロパワーFFSW-引張強さ変化の推移.jpg

フロロパワーFFSW-伸び変化の推移.jpg

フロロパワーFFSW-1000時間耐熱老化試験-凡例.jpg

フロロパワーFFSWと温度別(25〜300℃)耐熱老化試験

代表的な耐熱グレード(フロロパワーFFS、フロロパワーFFSW、フロロパワーFFHWフロロパワーAPHWフロロパワーFFH90フロロパワー3FH)に対して行った耐熱老化試験(温度別×70時間)のデータは以下のとおりです。尚、フロロパワー3FHは300℃で、比較用で同時に試験を行ったFKM-70(4D)で、それぞれ破損してしまったことからそれ以上の測定が継続できませんでした。

耐熱老化試験(温度別×70時間)データ

 

 

 

 

 

凡例-FFS.png

フロロパワーFFS
(耐熱330℃クラス)

凡例-FFSW.png

フロロパワーFFSW
 (耐熱330℃クラス)

凡例-FFHW.png

フロロパワーFFHW
(耐熱280℃クラス)

凡例-FFH90.png

フロロパワーFFH90
(耐熱280℃クラス)

凡例-APHW.png

フロロパワーAPHW
(耐熱270℃クラス)

凡例-3FH.png

フロロパワー3FH
(耐熱250℃クラス)

凡例-FKM-70(4D).png

FKM-70(4D)
(耐熱230℃クラス)

 

 

 

  硬さ変化の比較
耐熱老化試験-硬さ変化.png
  引張強さ変化の比較
耐熱老化試験-引張強さ.png
  伸び変化の比較
耐熱老化試験-伸び.png

フロロパワーFFSWの物性値

試験種類 項目 フロロパワーFFSW
(測定値)

常態物性試験

硬さ(JIS A)

83

引張強さ(MPa)

19.5

伸び率(%)

139

100%引張応力(MPa)

12.9

耐熱老化試験

試験条件 200℃×70時間
硬さ変化 0
引張強さ変化率(%) +17
伸び変化率(%) -1

圧縮永久歪み試験

試験条件 200℃×70時間

圧縮永久歪み率(%)

13

使用温度範囲

推奨値は0〜330℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪化する為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。尚、250℃以上の環境では熱膨張が大きくなりますので、通常の溝設計よりもつぶし代を小さめに、溝を大きめに設定することを推奨します。

 

圧力特性

最高圧力の推奨値は8MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性バックアップリングの併用で向上させることが出来ます。

 

耐薬品性

極めて優秀です。あらゆる薬品に耐性を有し、様々なゴム材質の中でも秀でています。Oリングの耐薬品性(接触流体と材質の適合性)に於いてより多くの液体や気体に対する耐久性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。

薬品名 耐性 薬品名 耐性
アセトアルデヒド ジメチルアセトアミド
アセトン ジエチルエーテル
アニリン 重油
アンモニア水 シンナー
IPA スピンドル油
エタノール 100℃水蒸気
エチレングリコール テトラクロロエチレン
エチレンジアミン テトラヒドロフラン
N-メチル-2-ピロリドン 灯油
エマルジョン系作動油 トリクロロエチレン
塩酸 トルエン
エンジン油 動物油
王水 ブチルアセテート
過酸化水素水 フッ酸
苛性カリ フレオンR134a ×
苛性ソーダ 不活性フッ素オイル ×
ガソリン ブレーキ油
カップグリス ヘキサン
ギア油 ベンゼン
キシレン ホルマリン
軽油 マシン油
クロロホルム
ケロシン 水系切削油
酢酸 メタノール
酢酸エチル MEK
硝酸 メチルイソブチルケトン
植物油 モノエタノールアミン
次亜塩素酸ソーダ ラッカー
ジオキサン リン酸エステル系作動油
四塩化炭素 硫酸
ジクロロメタン リチウムグリス
シリコングリス 鉱油系冷凍機油

◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可

注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。

 

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フロロパワーFFSW(耐熱・白色 FFKM/パーフロ)の使用について

主な使用箇所

  • CVD、拡散プロセスのゲートバルブ
  • CVD、拡散プロセスのドアバルブ
  • CVD、拡散プロセスのL型(アングル)バルブ
  • CVD、拡散プロセスの排気継手
  • CVD、拡散プロセスのチャンバーリッド
  • CVD、拡散プロセスの周辺機器
  • CVD、拡散プロセスのカソード

 

取扱注意点

  • 耐候性に優れ、光や熱による外部影響を受けにくい材質ではありますが、念のため湿度の低い冷暗所で保存して下さい。
  • 負荷が掛からない状態で保存して下さい。伸長や圧縮状態で保存すると変形や亀裂が発生しやすくなります。
  • 推奨温度や圧力を超えてのご使用は、急激な劣化を起こします。ご注意下さい。
  • 適さない流体との接触には十分注意して下さい。

 

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