フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属するFFKM(パーフロ)ゴム材質の耐熱白色グレードの旧タイプであるフロロパワーFFHW(Fluoro-Power FFHW/FP-FFHW)は、280℃の高温領域でも使用可能な耐熱性と、原材料のパーフロロエラストマー(FFKM)に由来する秀でた耐薬品性を有しているOリング用のゴム材質です。半導体製造や液晶製造のCVDやアニール、拡散といったプロセスで低パーティクル性が評価されておりましたが、現在は新規案件の生産を承っておりません。耐熱白色FFKMの後継となるフロロパワーFFSWといった耐プラズマ性を含む全ての性能が上回っている新グレードが開発されておりますので、図面指定などでやむを得ない場合を除き、切替を推奨いたします。
* フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。
化学構造
4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルエーテル共重合物です。主鎖の全てがフッ素化合物で、炭化水素結合が無いことから極性基にも強く、非常に優れた耐薬品性や耐熱性を有しています。尚、CSM部分は架橋し難いFFKM材の補助脚として非常に重要ですが、フロロパワーFFHWに於いては耐熱性の強化面でも大きな役割を担っており、特殊な構造をしています。
関連する法規制等
フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質は、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、ご使用の条件などを注意深くご確認ください。
フロロパワーFFHWと温度別(25〜300℃)耐熱老化試験
代表的な耐熱グレード(フロロパワーFFS、フロロパワーFFSW、フロロパワーFFHW、フロロパワーFFH90、フロロパワーAPHW、フロロパワー3FH)に対して行った耐熱老化試験(温度別×70時間)のデータは以下のとおりです。尚、フロロパワー3FHは300℃で、比較用で同時に試験を行ったFKM-70 (4D)は270℃で、それぞれ破損してしまったことからそれ以上の測定が継続できませんでした。
耐熱老化試験(温度別×70時間)データ
フロロパワーFFS
(耐熱330℃クラス)
フロロパワーFFSW
(耐熱330℃クラス)
フロロパワーFFHW
(耐熱280℃クラス)
フロロパワーFFH90
(耐熱280℃クラス)
フロロパワーAPHW
(耐熱270℃クラス)
フロロパワー3FH
(耐熱250℃クラス)
FKM-70(4D)
(耐熱230℃クラス)
フロロパワーFFHWの測定値
使用温度範囲
推奨値は0〜280℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪化する為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。
圧力特性
推奨最高圧力は3MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性はバックアップリングの併用で向上させることが出来ます。
耐薬品性
殆ど全ての薬品に耐性がありますが、フロロパワーFFやフロロパワーFFSと比較すると、劣っている部分があります。Oリングの耐薬品性(接触流体と材質の適合性)に於いてより多くの液体や気体に対する耐久性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。
薬品名 | 耐性 | 薬品名 | 耐性 |
---|---|---|---|
アセトアルデヒド | ◎ | ジメチルアセトアミド | ◎ |
アセトン | ◎ | ジエチルエーテル | ◎ |
アニリン | ◎ | A重油 | ◎ |
アンモニア水 | ◎ | シンナー | ◎ |
IPA | ◎ | 水酸化リチウム | ◎ |
エタノール | ◎ | 100℃水蒸気 | × |
エチレングリコール | ◎ | エチレングリコール | 〇 |
エチレンジアミン | × | テトラヒドロフラン | ◎ |
N-メチル-2-ピロリドン | ◎ | TEOS | ◎ |
塩化エチル | ◎ | トリクロロエチレン | 〇 |
塩酸 | ◎ | トルエン | ◎ |
エンジン油 | ◎ | トリエチルアミン | × |
王水 | ◎ | ブチルアセテート | ◎ |
過酸化水素水 | ◎ | フッ酸 | ◎ |
苛性カリ | ◎ | フレオンR134a | × |
苛性ソーダ | ◎ | 不活性フッ素オイル | × |
ガソリン | ◎ | ブレーキフルード(エーテル系) | ◎ |
蟻酸 | ◎ | ヘキサン | ◎ |
キシレン | ◎ | ベンゼン | ◎ |
クロロブロモメタン | ◎ | ホルマリン | ◎ |
クロロホルム | 〇 | メタクリル酸 | ◎ |
ケロシン | ◎ | 水 | ◎ |
三フッ化窒素 | ◎ | 水系切削油 | ◎ |
酢酸 | ◎ | メタノール | ◎ |
酢酸エチル | ◎ | MEK | ◎ |
硝酸 | ◎ | メチルイソブチルケトン | ◎ |
シクロヘキサン | ◎ | モノエタノールアミン | × |
次亜塩素酸ソーダ | ◎ | ラッカー | ◎ |
ジオキサン | ◎ | リン酸エステル系作動油 | ◎ |
四塩化炭素 | ◎ | 硫酸 | ◎ |
ジクロロメタン | ◎ | リチウムグリス | ◎ |
四フッ化炭素 | ◎ | 六フッ化硫黄 | ◎ |
◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可
注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。
主な使用箇所
取扱注意点
〒130-0021
東京都墨田区緑3丁目4番10号
桜シール本社ビル