フロロパワー3FH(耐熱3元系フッ素ゴム)の概要

フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属する3元系(3元共重合体)フッ素ゴム材質の耐熱(耐高温)タイプであるフロロパワー3FH(Fluoro-Power 3FH/FP-3FH)は、FKM-70(4D)などの汎用材質では対応することが難しい250℃の高温領域でも使用可能な耐熱性を有しているOリング用のゴム材質です。高温用に良化された3元共重合体のフッ素ゴム原材料としており、耐強酸性をはじめとして耐薬品性の面でも非常に優れている他、蒸気(スチーム)に対する耐久性なども兼ね備えています。フロロパワーFFSをはじめとするパーフロロエラストマーの耐熱強化グレードと比較して諸々の性能は劣ってしまいますが、オーバースペックを避けて価格を低く抑えるのに大変有効な材質です。

 * Oリング以外でも様々な形状の製品製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
 * フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。

>>>フロロパワーシリーズ(高機能材)
>>>材質の一覧(ラインナップと性能)
>>>材質名称の対比(規格/メーカー)

化学構造

2フッ化ビニリデン・6フッ化プロピレン・4フッ化エチレン3元共重合体です。一般的な2元系フッ素ゴム(2フッ化ビニリデン・6フッ化プロピレン共重合体)との大きな違いは、4フッ化エチレンが重合している点にあります。これにより分子中にC-H結合を含む2フッ化ビニリデン成分が減り、C-F結合の割合が増加して化学的結合力が強くなって、耐薬品性が向上しています。また、CF-CH2の結合が無いことから加水分解にも強い為、優秀な耐スチーム性も備わっています。尚、耐熱性の向上については、配合と架橋の構造が改良されていることに因ります。

 

関連する法規制等

  • RoHS指令10物質(Pb, Cd, Hg, Cr6+, PBB, PBDE, DEHP, BBP, DBP, DIBP)の含有量は閾値以下です。
  • REACH規制対象物質の意図的添加はいたしておりません。
  • TSCA PBT5物質(DecaBDE、2,4,6TTBP、PIP(3:1)、HCBD、PCTP)の意図的な添加は行っておりません。

フロロパワー3FH(耐熱3元系フッ素ゴム)の特性値や物性値

フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質は、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、ご使用の条件などを注意深くご確認ください。

 

フロロパワー3FHと温度別(25〜300℃)耐熱老化試験

代表的な耐熱グレード(フロロパワーFFSフロロパワーFFSWフロロパワーFFHWフロロパワーFFH90フロロパワーAPHW、フロロパワー3FH)に対して行った耐熱老化試験(温度別×70時間)のデータは以下のとおりです。尚、フロロパワー3FHは300℃で、比較用で同時に試験を行ったFKM-70 (4D)は270℃で、それぞれ破損してしまったことからそれ以上の測定が継続できませんでした。

耐熱老化試験(温度別×70時間)データ

 

 

 

凡例-FFS.png

フロロパワーFFS
(耐熱330℃クラス)

凡例-FFSW.png

フロロパワーFFSW
(耐熱330℃クラス)

凡例-FFHW.png

フロロパワーFFHW
(耐熱280℃クラス)

凡例-FFH90.png

フロロパワーFFH90
(耐熱280℃クラス)

凡例-APHW.png

フロロパワーAPHW
(耐熱270℃クラス)

凡例-3FH.png

フロロパワー3FH
(耐熱250℃クラス)

凡例-FKM-70(4D).png

FKM-70(4D)
(耐熱230℃クラス)

 

 

 

硬さ変化の比較
耐熱老化試験-硬さ変化.png
引張強さ変化の比較
耐熱老化試験-引張強さ.png
伸び変化の比較
耐熱老化試験-伸び.png

フロロパワー3FHの物性値

比較用の参考資料として、FKM-70(JIS B2401:2012)及び4種D(JIS B2401:2005)の規格値を併記いたします。

試験種類 項目 フロロパワー3FH
(測定値)

現JIS

JIS B2401 :2012
FKM-70

旧JIS

JIS B2401:2005
4種D

常態物性試験 硬さ(JIS A) 74 70±5 70±5
引張強さ(MPa) 12.8 > 10.0 > 9.8
伸び率(%) 242 > 170 > 200
100%引張応力(MPa) 6.4 > 2.0 > 1.9
耐熱老化試験 試験条件 200℃×70時間 230℃×72時間 230℃×24時間
硬さ変化 0 < +5 < +5
引張強さ変化率(%) +7 > -10 > -10
伸び変化率(%) -8 > -25 > -25
圧縮永久歪み試験 試験条件 200℃×70時間 200℃×72時間 175℃×22時間
圧縮永久歪み率(%) 20 < 40 < 40

使用温度範囲

推奨値は0〜250℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪化する為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。

 

圧力特性

推奨最高圧力は3MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性バックアップリングの併用で向上させることが出来ます。

 

耐薬品性

アルカリや極性溶剤などには適していませんが、強酸や油類、蒸気(スチーム)などに対する耐久性は優れています。Oリングの耐薬品性(接触流体と材質の適合性)に於いてより多くの液体や気体に対する耐久性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。

薬品名 耐性 薬品名 耐性
アセトン × ジメチルアセトアミド ×
アニリン ジブチルエーテル ×
アンモニア水 シンナー ×
IPA 150℃水蒸気
エタノール テトラクロロエチレン
エチレングリコール テトラヒドロフラン ×
エチレンジアミン × 灯油
N-メチル-2-ピロリドン × トリクロロエチレン
塩酸 トルエン
エンジン油 動物油
過酸化水素水 フッ酸
苛性カリ × フレオンR134a ×
苛性ソーダ × フッ素オイル
ガソリン ブレーキ油
カップグリス ヘキサン
ギヤ油 ベンゼン
キシレン マシン油
軽油 水系切削油
クロロホルム メタノール
ケロシン MEK ×
酢酸 × メチルイソブチルケトン ×
無水酢酸 × モノエタノールアミン ×
酢酸エチル × ラッカー ×
硝酸 りん酸エステル系作動油
植物油 硫酸

◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可

注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。

 

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フロロパワー3FH(耐熱3元系フッ素ゴム)の使用について

主な使用箇所

  • 高温ガスポンプのハウジング及び接続部
  • 高温仕様バルブのステム及び接続部
  • 熱処理炉のシール材
  • メカニカルシールのシール材
  • 熱交換設備やチラーのシール材
  • 化学プラント設備のシール材
  • 産業用設備の密閉箇所

 

取扱注意点

  • 耐候性に優れ、光や熱による外部影響を受けにくい材質ではありますが、念のため湿度の低い冷暗所で保存して下さい。
  • 負荷が掛からない状態で保存して下さい。伸長や圧縮状態で保存すると変形や亀裂が発生しやすくなります。
  • 推奨温度や圧力を超えてのご使用は、急激な劣化を起こします。ご注意下さい。
  • 適さない流体との接触には十分注意して下さい。

 

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