フロロパワーFFS(耐熱・黒色 FFKM/パーフロ)の概要

フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属するFFKM(パーフロ)ゴム材質の耐熱黒色タイプであるフロロパワーFFS(Fluoro-Power FFS/FP-FFS)は、原材料パーフルオロエラストマー(FFKM)が用いられているOリング用の各種ゴム材質の中でも、耐熱白色タイプのフロロパワーFFSWと並ぶ上級グレードの高機能ゴム材質です。耐熱パーフロの旧グレードであるフロロパワーFFHと比較して全ての性能が勝っており、330℃クラスの耐熱性と極めて優秀な耐薬品性に加えて、良好な機械特性をも兼ね備えています。

330℃クラスの耐熱性と万能に近い耐薬品性の両立に成功したことで、従来の耐熱パーフロでは使用不可能であった高温飽和スチームや高温アミン系流体などに対しても耐性を持ちます。また、パーフロ材質でありながら機械特性にも優れ、20MPaクラスの引張強度や200%以上の伸び率などによって良好な耐圧性を有しています。これまでは選択肢が存在しなかったような厳しい環境にも対応できる最高峰のOリング材質「フロロパワーFFS」は、高温下での長期使用が可能になることでOリングの交換頻度が抑えられる為、経費や廃棄物の削減にも有効です。

尚、FFKM系統の代表的な耐熱グレードであるフロロパワーFFSやフロロパワーFFSWは、優秀な性能を総合的に有している利用の幅が広い材質です。しかし、例えば開閉運動が繰り返される箇所のシール部材といった特定の動的用途では、最高耐熱温度や一部の耐薬品性が若干劣るフロロパワーFFCSの方が効果的な場合があります。使用可能な材質が複数あるケースでも、より適切なものの選択を推奨いたします。
 

 * Oリング以外でも様々な形状の製品製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
 * フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。

>>>フロロパワーシリーズ(高機能材)
>>>材質の一覧(ラインナップと性能)
>>>材質名称の対比(規格/メーカー)

化学構造

CSM:Cure Site Monomer

フロロパワーFF同様、4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルエーテル共重合物です。
主鎖の全てがフッ素結合(C−F)で炭化水素結合(C−H)が無いことで、非常に優れた耐薬品性や腐食ガス性、耐熱性を有します。全体的に殆どフッ素化されていることから架橋は容易ではなく、CSM部分はその補助脚を目的として付加されています。フロロパワーFFSは、このCSM部分と架橋助剤によって特殊架橋を形成し、非常に強い耐熱性を実現しています。

 

関連する法規制等

  • 食品衛生法(厚生労働省告示第595号 旧厚生省告示第370号 ゴム製の器具又は容器包装)に適合しています。
  • RoHS指令10物質(Pb, Cd, Hg, Cr6+, PBB, PBDE, DEHP, BBP, DBP, DIBP)の含有量は閾値以下です。
  • REACH規制対象物質の意図的添加はいたしておりません。
  • TSCA PBT5物質(DecaBDE、2,4,6TTBP、PIP(3:1)、HCBD、PCTP)の意図的な添加は行っておりません。

フロロパワーFFS(耐熱・黒色 FFKM/パーフロ)の特性値や物性値

フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質は、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、ご使用の条件などを注意深くご確認ください。

 

フロロパワーFFSと長時間(1000時間)耐熱老化試験

トップグレードの耐熱パーフロ(フロロパワーFFS及びフロロパワーFFSW)専用の特殊条件(260℃×最長1000時間)による耐熱老化試験のデータは以下の通りです。尚、比較用で同時に試験を行ったFKM-70(4D)については、1000時間未満で破損して測定不能となりました。

  硬さ変化の推移

  引張強さ変化の推移

  伸び変化の推移

フロロパワーFFSW-硬さ変化の推移.jpg
フロロパワーFFSW-引張強さ変化の推移.jpg
フロロパワーFFSW-伸び変化の推移.jpg
フロロパワーFFSW-1000時間耐熱老化試験-凡例.jpg

フロロパワーFFSと温度別(25〜300℃)耐熱老化試験

代表的な耐熱グレード(フロロパワーFFS、フロロパワーFFSWフロロパワーFFHWフロロパワーFFH90フロロパワーAPHWフロロパワー3FH)に対して行った耐熱老化試験(温度別×70時間)のデータは以下のとおりです。尚、フロロパワー3FHは300℃で、比較用で同時に試験を行ったFKM-70 (4D)は270℃で、それぞれ破損してしまったことからそれ以上の測定が継続できませんでした。

耐熱老化試験(温度別×70時間)データ

 

 

 

 

凡例-FFS.png

フロロパワーFFS
(耐熱330℃クラス)

凡例-FFSW.png

フロロパワーFFSW
(耐熱330℃クラス)

凡例-FFHW.png

フロロパワーFFHW
(耐熱280℃クラス)

凡例-FFH90.png

フロロパワーFFH90
(耐熱280℃クラス)

凡例-APHW.png

フロロパワーAPHW
(耐熱270℃クラス)

凡例-3FH.png

フロロパワー3FH
(耐熱250℃クラス)

凡例-FKM-70(4D).png

FKM-70(4D)
(耐熱230℃クラス)

 

 

  硬さ変化の比較
耐熱老化試験-硬さ変化.png
  引張強さ変化の比較
耐熱老化試験-引張強さ.png
  伸び変化の比較
耐熱老化試験-伸び.png

フロロパワーFFSの測定値

試験種類 項目 フロロパワーFFS
常態物性試験 硬度 (JIS-A) 75
引張強さ (MPa) 20.8
伸び率 (%) 163
100%引張応力 (MPa) 9.9
耐熱老化試験 試験条件 200℃×70時間
硬さ変化 0
引張強さ変化率(%) +7
伸び変化率 (%) +3
圧縮永久歪み試験 試験条件 200℃×70時間
圧縮永久歪み率 (%)  6

使用温度範囲

推奨値は0〜330℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪くなる為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。尚、250℃以上の環境では熱膨張が大きくなりますので、通常の溝設計よりもつぶし代を小さめに、溝を大きめに設定することを推奨します。

 

圧力特性

最高圧力の推奨値は5MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性バックアップリングの併用で向上させることが出来ます。

 

耐薬品性

極めて優秀です。あらゆる薬品に使用することが可能で、ゴム材の中で最も優れています。Oリングの耐薬品性 (接触流体と材質の適合性)にてより多くの液体や気体に対する耐性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。

薬品名 耐性 薬品名 耐性
アセトアルデヒド ジメチルアセトアミド
アセトン ジエチルエーテル
アニリン 重油
アンモニア水 シンナー
IPA スピンドル油
エタノール 100℃水蒸気
エチレングリコール テトラクロロエチレン
エチレンジアミン テトラヒドロフラン
N-メチル-2-ピロリドン 灯油
エマルジョン系作動油 トリクロロエチレン
塩酸 トルエン
エンジン油 動物油
王水 ブチルアセテート
過酸化水素水 フッ酸
苛性カリ フレオンR134a ×
苛性ソーダ 不活性フッ素オイル ×
ガソリン ブレーキ油
カップグリス ヘキサン
ギア油 ベンゼン
キシレン ホルマリン
軽油 マシン油
クロロホルム
ケロシン 水系切削油
酢酸 メタノール
酢酸エチル MEK
硝酸 メチルイソブチルケトン
植物油 モノエタノールアミン
次亜塩素酸ソーダ ラッカー
ジオキサン リン酸エステル系作動油
四塩化炭素 硫酸
ジクロロメタン リチウムグリス
シリコングリス 鉱油系冷凍機油

◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可

注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。

 

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フロロパワーFFS(耐熱・黒色 FFKM/パーフロ)の使用について

主な使用箇所

  • 高温シリンダー、ピストン、ロッドの密閉部
  • 高温スチームボイラーのシール材
  • ケミカルポンプのハウジング及び接続部
  • ケミカルバルブ、高温バルブのステム及び接続部
  • 高温真空装置のシール材
  • 高温継手のシール材
  • メカニカルシールのシール材
  • 化学プラント設備のシール材
  • 薬品容器の密閉材
  • CVD、拡散プロセスのゲートバルブ
  • CVD、拡散プロセスのドアバルブ
  • CVD、拡散プロセスのL型(アングル)バルブ
  • CVD、拡散プロセスの排気継手
  • CVD、拡散プロセスの周辺機器
  • CVD、拡散プロセスのチャンバーリッド

 

取扱注意点

  • 耐候性に優れ、光や熱による外部影響を受けにくい材質ではありますが、念のため湿度の低い冷暗所で保存して下さい。
  • 負荷が掛からない状態で保存して下さい。伸長や圧縮状態で保存すると変形や亀裂が発生しやすくなります。
  • 推奨温度や圧力を超えてのご使用は、急激な劣化を起こします。ご注意下さい。
  • 適さない流体との接触には十分注意して下さい。

 

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