フロロパワーFFH(耐熱・黒色 FFKM/パーフロ;旧式)の概要

フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属するFFKM(パーフロ)ゴム材質の耐熱グレードの旧タイプであるフロロパワーFFH(Fluoro-Power FFH/FP-FFH)は、300℃の高温領域でも使用可能な耐熱性と優秀な耐薬品性を兼ね備えている高温・高圧力用のOリング用のゴム材質です。但し、現在では化学的にも物理的にも全ての性能が上回る高温用パーフロのフロロパワーFFSなどが開発されている為、図面指定などでやむを得ない場合を除いて新グレードへの切替を推奨しています。

 * フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。

CSM:Cure Site Monomer

化学構造

4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルエーテル共重合物です。主鎖の全てがフッ素化合物で、炭化水素結合が無いことから極性基にも強く、非常に優れた耐薬品性や耐熱性を有しています。フロロパワーFFHは、CSM部分の改良によって特殊な架橋を形成することで、通常のFFKM材質よりも耐熱性が強化されています。しかし、その架橋に因ってスチームやアミンに対する耐性が劣ります(新グレードでは改善されています)。

関連する法規制等

  • RoHS指令10物質(Pb, Cd, Hg, Cr6+, PBB, PBDE, DEHP, BBP, DBP, DIBP)の含有量は閾値以下です。
  • REACH規制対象物質の意図的添加はいたしておりません。
  • TSCA PBT5物質(DecaBDE、2,4,6TTBP、PIP(3:1)、HCBD、PCTP)の意図的な添加は行っておりません。

フロロパワーFFH(耐熱・黒色 FFKM/パーフロ;旧式)の特性値や物性値

フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質は、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、ご使用の条件などを注意深くご確認ください。

 

フロロパワーFFHの測定値

試験種類 項目 フロロパワーFFH
常態物性試験 硬さ(JIS-A) 78
引張強さ(MPa) 13.6
伸び率(%) 250
100%引張応力(MPa) 6.16
耐熱老化試験 試験条件 230℃×70時間
硬さ変化 0
引張強さ変化率(%) -6
伸び変化率(%) +4
圧縮永久歪み試験 試験条件 200℃×70時間
圧縮永久歪み率(%) 33

使用温度範囲

推奨値は0〜300℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪化する為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。

 

圧力特性

推奨最高圧力は3MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性バックアップリングの併用で向上させることが出来ます。

 

耐薬品性

殆ど全ての薬品に耐性がありますが、フロロパワーFFフロロパワーFFSと比較すると、劣っている部分があります。Oリングの耐薬品性(接触流体と材質の適合性)に於いてより多くの液体や気体に対する耐久性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。

薬品名 耐性 薬品名 耐性
アセトアルデヒド ジメチルアセトアミド
アセトン ジエチルエーテル
アニリン A重油
アンモニア水 シンナー
IPA 水酸化リチウム
エタノール 100℃水蒸気 ×
エチレングリコール テトラクロロエチレン
エチレンジアミン × テトラヒドロフラン
N-メチル-2-ピロリドン 灯油
塩化エチル トリクロロエチレン
塩酸 トルエン
エンジン油 トリエチルアミン ×
王水 ブチルアセテート
過酸化水素水 フッ酸
苛性カリ フレオンR134a ×
苛性ソーダ 不活性フッ素オイル ×
ガソリン ブレーキ油
カップグリス ヘキサン
蟻酸 ベンゼン
キシレン ホルマリン
クロロブロモメタン メタクリル酸
クロロホルム
酢酸 メタノール
酢酸エチル MEK
硝酸 メチルイソブチルケトン
シクロヘキサン モノエタノールアミン ×
次亜塩素酸ソーダ ラッカー
ジオキサン リン酸エステル系作動油
四塩化炭素 硫酸
ジクロロメタン リチウムグリス
シリコングリス 六フッ化硫黄

◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可

注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。

代表的な耐熱グレードの温度別(25〜300℃)耐熱老化試験

フロロパワーFFHは旧グレードの為、全ての性能が上回る新グレードへの切替を推奨しています。参考として、以下に代表的な耐熱グレード(フロロパワーFFSフロロパワーFFHWフロロパワーFFH90フロロパワー3FH)に対して行った耐熱老化試験(温度別×70時間)のデータを記載いたします。尚、フロロパワー3FHは300℃で、比較用で同時に試験を行ったFKM-70 (4D)は270℃で、それぞれ破損してしまったことから測定不能でした。

耐熱老化試験(温度別×70時間)データ

 

 



 

凡例-FFS.png

フロロパワーFFS
(耐熱330℃クラス)

凡例-FFSW.png

フロロパワーFFSW
(耐熱330℃クラス)

凡例-FFHW.png

フロロパワーFFHW
(耐熱280℃クラス)

凡例-FFH90.png

フロロパワーFFH90
 (耐熱280℃クラス)

凡例-APHW.png

フロロパワーAPHW
(耐熱270℃クラス)

凡例-3FH.png

フロロパワー3FH
 (耐熱250℃クラス)

凡例-FKM-70(4D).png

FKM-70(4D)
(耐熱230℃クラス)

硬さ変化の比較
耐熱老化試験-硬さ変化.png
引張強さ変化の比較
耐熱老化試験-引張強さ.png
伸び変化の比較
耐熱老化試験-伸び.png

フロロパワーFFH(耐熱・黒色 FFKM/パーフロ;旧式)の使用について

主な使用箇所

  • 高温シリンダー、ピストン、ロッドの密閉部
  • ケミカルポンプのハウジング及び接続部
  • ケミカルバルブ、高温バルブのステム及び接続部
  • 高温真空装置のシール材
  • 高温継手のシール材
  • メカニカルシールのシール材
  • 化学プラント設備のシール材
  • 薬品容器の密閉材

 

取扱注意点

  • 耐候性に優れ、光や熱による外部影響を受けにくい材質ではありますが、念のため湿度の低い冷暗所で保存して下さい。
  • 負荷が掛からない状態で保存して下さい。伸長や圧縮状態で保存すると変形や亀裂が発生しやすくなります。
  • 推奨温度や圧力を超えてのご使用は、急激な劣化を起こします。ご注意下さい。
  • 適さない流体との接触には十分注意して下さい。

 

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