フロロパワーAPHW(耐熱白色FEPM/アフラス)の概要

フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属するFEPM(アフラス)ゴム材質の耐熱白色タイプであるフロロパワーAPHW(Fluoro-Power APHW/FP-APHW)は、原材料に最新型のFEPM(アフラス/テトラフルオロエチレンプロピレン系フッ素ゴム)が用いられているOリング用の各種ゴム材質のひとつです。FKM-70 (4D)など汎用の2元系フッ素ゴム材質では対応することが難しい270℃クラスの耐熱性、並びに強酸や強アルカリ、蒸気などに対する耐薬品性を兼ね備え、加えてノンカーボンの白色材質でありながら優良な機械的性質を有しています。

フロロパワーAPHWは、半導体をはじめとする電子産業に於いてフロロパワーFFWフロロパワーFFSWなどのFFKMゴム材質と使い分けることで、ランニングコストの低減を可能にする材質です。特にCVDプロセスにあっては、高温やハロゲンラジカルに対する優れた耐性により、極めて高い効果を発揮します。尚、前述のとおり高温条件下でも良好な圧縮永久歪み率を維持できる耐熱性、汎用材には無い優れた耐薬品性、低着香性や耐放射線性、電気絶縁性といった珍しい特性、そしてカーボンブラック無添加の白色材質であるにも拘わらず強い物性といった種々の優秀な性能から、電子産業に限らず幅広い分野での活躍が期待される材質です。

 * Oリング以外でも様々な形状の製品製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
 * フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。

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>>>材質の一覧(ラインナップと性能)
>>>材質名称の対比(規格/メーカー)

化学構造

4フッ化エチレン・プロピレン共重合体です。EPMのエチレン部分をフッ素化していることからフッ化EPM、つまりはFEPMと呼ばれています。EPMの長所を保持しながらフッ化によって耐薬品性や耐熱性が向上されており、同じくフッ素ゴムに分類される一般的なFKMとは大きく性能が異なります。その他、FEPMが有す特殊な性質として耐放射線性が挙げられます。放射線を照射した際、FKMやFFKMといった他のフッ素ゴムでは架橋が切断されて物性が著しく低下するのに対し、FEPMの場合は主鎖であるプロピレンが放射線で架橋することから、物性が維持または良化する傾向があります。

 

関連する法規制等

  • RoHS指令10物質(Pb, Cd, Hg, Cr6+, PBB, PBDE, DEHP, BBP, DBP, DIBP)の含有量は閾値以下です。
  • REACH規制対象物質の意図的添加はいたしておりません。
  • TSCA PBT5物質(DecaBDE、2,4,6TTBP、PIP(3:1)、HCBD、PCTP)の意図的な添加は行っておりません。

フロロパワーAPHW(耐熱白色FEPM/アフラス)の特性値や物性値

フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質には、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、使用条件などを注意深く確認して下さい。

 

フロロパワーAPHWと温度別(25〜300℃)耐熱老化試験

代表的な耐熱グレード(フロロパワーFFSフロロパワーFFSWフロロパワーFFHWフロロパワーFFH90、フロロパワーAPHW、フロロパワー3FH)に対して行った耐熱老化試験(温度別×70時間)のデータは以下のとおりです。尚、フロロパワー3FHは300℃の試験時に、比較用で同時に試験を行ったFKM-70(4D)は270℃の試験時に、それぞれ破損してしまったことから測定不能となりました。

耐熱老化試験(温度別×70時間)データ

 

 

 

凡例-FFS.png

フロロパワーFFS
(耐熱330℃クラス)

凡例-FFSW.png

フロロパワーFFSW
(耐熱330℃クラス)

凡例-FFHW.png

フロロパワーFFHW
(耐熱280℃クラス)

凡例-FFH90.png

フロロパワーFFH90
(耐熱280℃クラス)

凡例-APHW.png

フロロパワーAPHW
(耐熱270℃クラス)

凡例-3FH.png

フロロパワー3FH
(耐熱250℃クラス)

凡例-FKM-70(4D).png

FKM-70(4D)
(耐熱230℃クラス)

硬さ変化の比較
耐熱老化試験-硬さ変化.png
引張強さ変化の比較
耐熱老化試験-引張強さ.png
伸び変化の比較
耐熱老化試験-伸び.png

フロロパワーAPHWの物性値

試験種類 項目 フロロパワーAPHW
(測定値)
常態物性試験 硬さ(JIS A) 73
引張強さ(MPa) 19.8
伸び率(%) 131
100%引張応力(MPa) 13.2
耐熱老化試験 試験条件 200℃×70時間
硬さ変化 +2
引張強さ変化率(%) +3
伸び変化率(%) -8
圧縮永久歪み試験 試験条件 200℃×70時間
圧縮永久歪み率(%) 23

使用温度範囲

推奨値は0〜270℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪化する為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。

 

圧力特性

最高圧力の推奨値は5MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性バックアップリングの併用で向上させることが出来ます。

 

耐薬品性

強酸や強アルカリ、アミン、蒸気(スチーム)などに強い耐性を示します。その他、旧型FEPMによるフロロパワーAFと比較して、全ての耐薬品性が良化しています。Oリングの耐薬品性(接触流体と材質の適合性)に於いてより多くの液体や気体に対する耐久性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。

薬品名 耐性 薬品名 耐性
アセトアルデヒド × ジメチルアセトアミド
アセトン × ジエチルエーテル ×
アニリン シンナー ×
アンモニア水 150℃水蒸気
IPA TMAH
アクリロニトリル テトラヒドロフラン ×
エタノール 灯油
エチレングリコール トリクロロエチレン
エチレンジアミン トルエン ×
N-メチル-2-ピロリドン × 動物油
塩酸 フッ酸
エンジン油 フレオンR134a ×
過酸化水素水 不活性フッ素オイル ×
苛性カリ ブレーキ油
苛性ソーダ ヘキサン
ガソリン ベンゼン ×
カップグリス マシン油
ギア油 水系切削油
キシレン モノエタノールアミン
軽油 メタノール
クロロホルム MEK ×
酢酸 メチルイソブチルケトン ×
酢酸エチル ラッカー ×
硝酸 リン酸エステル系作動油
植物油 蟻酸
次亜塩素酸ソーダ リチウムグリス
四塩化炭素 × 鉱油系冷凍機油
シリコングリス トリエチルアミン

◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可

注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。

 

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フロロパワーAPHW(耐熱白色FEPM/アフラス)の使用について

主な使用箇所

  • CVDプロセスにおけるゲートバルブ
  • CVDプロセスにおけるドアバルブ
  • CVDプロセスにおけるL型(アングル)バルブ
  • CVDプロセスにおけるチャンバーリッド
  • CVDプロセスにおける配管継手

 

取扱注意点

  • 耐候性に優れ、光や熱による外部影響を受けにくい材質ではありますが、念のため湿度の低い冷暗所で保存して下さい。
  • 負荷が掛からない状態で保存して下さい。伸長や圧縮状態で保存すると変形や亀裂が発生しやすくなります。
  • 推奨温度や圧力を超えてのご使用は、急激な劣化を起こします。ご注意下さい。
  • 適さない流体との接触には十分注意して下さい。

 

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