フロロパワーFFSG(Fluoro-Power FFSG/FP-FFSG)は、370℃クラスという全世界で正しく最高峰となる耐熱性を備えたOリング用のゴム材質です。高機能フッ素ゴムの代名詞とも目される各種FFKM(パーフロ)材質は、耐熱性の他にも極めて優秀な耐薬品性などの諸性能により、フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに於いても旗艦を担う先端的な高分子化合物です。それらの原材料である「パーフルオロエラストマー(FFKM)」に対し、日本ゼオン社との協力で先端素材の「SGCNT(Super Growth single-walled Carbon Nanotube = スーパーグロース法による単層カーボンナノチューブ/以下参照)」を配合することに成功したのが、このフロロパワーFFSGです。先端技術の邂逅により、高温域での選択肢としてこれまで頂点を担ってきたフロロパワーFFS並びにフロロパワーFFSWを凌ぐ特級の耐熱グレードが誕生し、ゴム材質の限界値が大きく更新されることと相成りました。
参考記事<「技術トピックス」, 『月間トライボロジー』 2021年6月号, pp.58-59, 新樹社.>(PDF)
日本発「SGCNT」について |
CNTとは、炭素によって作られる同素体の一種「カーボンナノチューブ = Carbon Nanotube」のことです。次世代の炭素素材と目されるナノマテリアル(粒径が100nm以下の素材。1nm = 1ナノメートルは10-9メートル、つまり10億分の1メートル。)で、一般にその構造からSWCNT(単層カーボンナノチューブ = Single-Walled Carbon Nanotube)とMWCNT(多層カーボンナノチューブ = Multi-Walled Carbon Nanotube)に分類されます。尚、フロロパワーFFSGに用いられている「SGCNT」の「CNT」は、SWCNTとなります。SWCNTは熱や電気の伝導性が高かったり高強度であったりという特性を有しており、それらはフロロパワーFFSGの突出した耐熱性を支える上で重要な役割を担っています。また「SGCNT」の「SG」とは、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトの成果を基に産総研(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)が開発したCVD法(触媒金属のナノ粒子と炭化水素を熱分解してCNTを得る手法)のひとつ「スーパーグロース法 = a Super Growth method」を表しています。稀有な性質を宿すCNT(SWCNT)ですが、合成に多大な費用を要することから、学術研究に向けた用途の域を超える事が難しい素材でもありました。そのコストを実用的なレベルまで近づけたのが、当該のスーパーグロース法です。この画期的な合成技術では、極微量の水分添加によって合成雰囲気にある触媒の寿命を飛躍的に延ばすことで、従来の3,000倍もの時間効率で大量のCNT(SWCNT)が生産できるようになりました。とは言えSGCNTは、ゴム製品の配合材に用いるには依然として高価である上、ゴムコンパウンドの製作工程ではパーフルオロエラストマー(FFKM)などのポリマー内に均一分散させる特別な技術を要する等々、まだまだ課題の多い素材です。しかしながら、我が国の科学技術が紡ぎ出したSGCNTとフロロパワーFFSGが、日本を越えて世界中の幅広い産業や研究分野に新たな光明を照らす存在となって、広く貢献してゆけることを強く期待しております。 |
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* Oリング以外でも様々な形状の製品製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
* フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。
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化学構造
4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルエーテル共重合物です。主鎖の全てが弗素結合(C−F)であり、炭化水素結合(C−H)が無い為、非常に優れた耐薬品性や耐熱性を有しています。尚、全体的に殆ど弗素化されている構造であることから架橋が難しい為、補助脚としてCSMが付加されています。 | ![]() |
CSM:Cure Site Monomer |
関連する法規制等
- RoHS指令10物質(Pb, Cd, Hg, Cr6+, PBB, PBDE, DEHP, BBP, DBP, DIBP)の含有量は閾値以下です。
- REACH規制対象物質の意図的添加はいたしておりません。
- TSCA PBT5物質(DecaBDE、2,4,6TTBP、PIP(3:1)、HCBD、PCTP)の意図的な添加は行っておりません。