フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属するFFKM(パーフロ)ゴム材質の標準黒色タイプであるフロロパワーFF(Fluoro-Power FF/FP-FF)は、極めて優秀な耐薬品性や耐熱性に加え、機械特性にも優れているOリング用のゴム材質です。以前は半導体などの特定産業を中心に流通していたFFKM(パーフロ)ゴム材質ですが、現在は多岐に亘る産業で一般材質と並んで扱われることも多く、その中でも標準タイプであるこのフロロパワーFF、そして耐熱タイプのフロロパワーFFSとは、スタンダードなFFKM(パーフロ)材質として幅広い産業で活用されています。
元来、原材料にパーフルオロエラストマー(FFKM)が用いられているゴム材質は、全てのゴム材質の中で最も優秀な耐薬品性能とトップレベルの耐熱性を有する反面、4フッ化エチレン樹脂に近い構造であることから機械特性も樹脂寄りになり、当然ながらシール性能も良好であるとはいい難いものでした。そのような古い設計のFFKM(パーフロ)ゴム材質に対し、桜シール社のフロロパワーFFは、AGC旭硝子社との協力で耐薬品性・耐熱性・機械特性の全てで高い性能を保持させることに成功した、過酷な使用条件を想定して新たな設計がなされているFFKM(パーフロ)材質です。
* Oリング以外でも様々な形状の製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
* フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。
化学構造
4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルエーテル共重合物と呼ばれ、主鎖の全てがフッ
素化合物で炭化水素結合が無いことから極性基にも強く、非常に優れた耐薬品性と耐熱性を有します。FFKMの化学構造にはいくつかのタイプが存在しますが、Rf(エーテル)部分が多少異なる以外はどれも大体同じ構造です。ゴム類の中では最もフッ素濃度が高く、一般のFKMが65%以下なのに対し75%以上にもなり、密度(比重)が非常に高いのも特徴です。フッ素を非常に多く使用し、また重合が難しい物質であることから、ゴムとしては非常に高価な材料です。
関連する法規制等
フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質は、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、ご使用の条件などを注意深くご確認ください。
フロロパワーFFの測定値
試験種類 | 項目 | フロロパワーFF |
---|---|---|
常態物性試験 | 硬度 (JIS-A) | 77 |
引張強さ (MPa) | 21 | |
伸び率 (%) | 195 | |
100%引張応力 (MPa) | 7.7 | |
耐熱老化試験 | 試験条件 | 200℃×70時間 |
硬さ変化 | 0 | |
引張強さ変化率 (%) | +2 | |
伸び変化率 (%) | +6 | |
圧縮永久歪み試験 | 試験条件 | 200℃×70時間 |
圧縮永久歪み率 (%) | 14 |
使用温度範囲
推奨値は0〜230℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪くなる為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。
圧力特性
最高圧力の推奨値は5MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性はバックアップリングの併用で向上させることが出来ます。
耐薬品性
極めて優秀です。あらゆる薬品に使用することが可能で、ゴム材の中で最も優れています。Oリングの耐薬品性 (接触流体と材質の適合性)にてより多くの液体や気体に対する耐性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。
薬品名 | 耐性 | 薬品名 | 耐性 |
---|---|---|---|
アセトアルデヒド | ◎ | ジメチルアセトアミド | ◎ |
アセトン | ◎ | ジエチルエーテル | ◎ |
アニリン | ◎ | 重油 | ◎ |
アンモニア水 | ◎ | シンナー | ◎ |
IPA | ◎ | スピンドル油 | ◎ |
エタノール | ◎ | 100℃水蒸気 | ◎ |
エチレングリコール | ◎ | テトラクロロエチレン | 〇 |
エチレンジアミン | ◎ | テトラヒドロフラン | ◎ |
N-メチル-2-ピロリドン | ◎ | 灯油 | ◎ |
エマルジョン系作動油 | ◎ | トリクロロエチレン | 〇 |
塩酸 | ◎ | トルエン | ◎ |
エンジン油 | ◎ | 動物油 | ◎ |
王水 | ◎ | ブチルアセテート | ◎ |
過酸化水素水 | ◎ | フッ酸 | ◎ |
苛性カリ | ◎ | フレオンR134a | × |
苛性ソーダ | ◎ | 不活性フッ素オイル | × |
ガソリン | ◎ | ブレーキ油 | ◎ |
カップグリス | ◎ | ヘキサン | ◎ |
ギア油 | ◎ | ベンゼン | ◎ |
キシレン | ◎ | ホルマリン | ◎ |
軽油 | ◎ | マシン油 | ◎ |
クロロホルム | 〇 | 水 | ◎ |
ケロシン | ◎ | 水系切削油 | ◎ |
酢酸 | ◎ | メタノール | ◎ |
酢酸エチル | ◎ | MEK | ◎ |
硝酸 | ◎ | メチルイソブチルケトン | ◎ |
植物油 | ◎ | モノエタノールアミン | ◎ |
次亜塩素酸ソーダ | ◎ | ラッカー | ◎ |
ジオキサン | ◎ | リン酸エステル系作動油 | ◎ |
四塩化炭素 | 〇 | 硫酸 | ◎ |
ジクロロメタン | ◎ | リチウムグリス | ◎ |
シリコングリス | ◎ | 冷凍機油(鉱物系) | ◎ |
◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可
注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。
主な使用箇所
取扱注意点
〒130-0021
東京都墨田区緑3丁目4番10号
桜シール本社ビル