フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属するFFKO(サイフェル)材質の低溶出タイプであるフロロパワーFOP(Fluoro-Power FOP/FP-FOP)は、高純度薬品や高純度プロセスでの使用を目的として開発された、極低溶出性のOリング用ゴム材質です。特殊配合とクリーン化された製造工程によって洗浄工程を必要とせずに極めて優秀な低溶出性を実現しており、アセトンやMEK、トルエンのような溶解性の高い液体に対する金属イオン(3周期以降の元素)の溶出量が、最も溶出量が多くなる接液の初期段階に於いても製品重量当たり3ppb(0.0000003%)未満となるように設計(参考データ)されています。基材のFFKO(サイフェル)に由来する極めて優れた耐低温性や耐薬品性を有すフロロパワーFOPは、同じく極低溶出グレードとしてラインナップされているフロロパワーFFP(極低溶出FFKM >0.5ppb未満)やフロロパワーAPP(極低溶出FEPM >10ppb未満)、フロロパワーDEP(極低溶出FFKM-E)と並び、高純度薬品の製造や半導体用の洗浄装置などで高い効果を発揮します。
尚、フロロパワーFOPの最大の特徴は、桜シール独自の配合技術によって全ての溶出因子が抑止された極低溶出性です。素手で製品に触れるなどするとナトリウムやカルシウムといった不純物が付着し、溶出の原因となります。桜シールによる梱包はご使用の直前まで開封することなく維持し、製品を取り出す際にも細心の注意を払うようにして下さい。
* Oリング以外でも様々な形状の製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
* フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。
化学構造
フッ素化ポリエーテル骨格がシリコーンを介して架橋している重合体です。この材料は主鎖に炭素と酸素を持つことから、ISO1629とASTM D 1418の分類ではOグループに属し、FFKOと称されます。ポリエーテルの水素原子が全てフッ素化されている主鎖骨格とSi架橋反応基により、秀でた耐薬品性と耐寒性とを両立させています。
関連する法規制等
フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質には、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、使用条件に細心の注意を払って下さい。
フロロパワーFOPと低温弾性回復試験(TR試験/T-R試験)
耐低温性に優れる代表的な高機能材(フロロパワーFOやフロロパワーFOG、フロロパワーFOB、フロロパワーFOP、フロロパワーDL、フロロパワーFQ)に対して行った低温弾性回復試験(TR試験/T-R試験)のデータは、以下の通りです。
フロロパワーFOP
含有金属量の試験データ (単位:ppb) | |||||||||||||||||
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試験 条件 | 液体の種類: 塩酸 (HCl) 3.4% 液体の温度: 常温 (RT) 液 量: 100cc 試 験 片: P-26 サンプル数 N: 3個 浸 漬 時 間: 24時間(1日) 及び 168時間(1週間) 試 験 方 法: 灰化法 ICP-MS | ||||||||||||||||
元素 (1) | 記号 | Li | Na | Mg | Al | K | Ca | Ti | Cr | ||||||||
和名 | リチウム | ナトリウム | マグネシウム | アルミニウム | カリウム | カルシウム | チタン | クロム | |||||||||
英名 | Lithium | Sodium | Magnesium | Aluminium | Potassium | Calcium | Titanium | Chromium | |||||||||
浸漬 時間 (h) | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | |
試料 | No.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | 0.11 | <0.1 | <0.1 | 0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | 0.47 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 |
No.2 | <0.1 | <0.1 | 0.26 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | 0.35 | <0.1 | 0.72 | <0.1 | 2.54 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | |
No.3 | <0.1 | <0.1 | 0.66 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | 0.13 | <0.1 | 0.33 | <0.1 | 0.79 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | |
平均値 | <0.1 | <0.1 | <0.34 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.19 | <0.1 | <0.38 | <0.1 | <1.3 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 |
元素 (2) | 記号 | Mn | Fe | Ni | Cu | Zn | Ag | Cd | Pb | ||||||||
和名 | マンガン | 鉄 | ニッケル | 銅 | 亜鉛 | 銀 | カドミウム | 鉛 | |||||||||
英名 | Manganese | Iron | Nickel | Copper | Zinc | Silver | Cadmium | Lead | |||||||||
浸漬 時間 (h) | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | |
試料 | No.1 | <0.1 | <0.1 | 0.13 | 0.27 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 |
No.2 | <0.1 | <0.1 | 0.31 | 0.23 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | 0.44 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | |
No.3 | <0.1 | <0.1 | 0.27 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | |
平均値 | <0.1 | <0.1 | <0.24 | <0.2 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.21 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 |
※ 素手で製品に触れるなどすると、ナトリウムやカルシウムといった不純物が付着する原因となります。桜シールによる梱包はご使用の直前まで開封することなく維持し、製品を取り出す際にも細心の注意を払うようにして下さい。
フロロパワーFOPの測定値
試験種類 | 項目 | フロロパワーFO | フロロパワーFOP |
---|---|---|---|
70 | 69 | ||
8.4 | 8.3 | ||
237 | 239 | ||
3.4 | 3.5 | ||
試験条件 | 175℃×70時間 | 175℃×70時間 | |
硬さ変化 | +1 | +3 | |
引張強さ変化率(%) | -11 | -14 | |
伸び変化率(%) | -22 | -21 | |
試験条件 | 175℃×22時間 | 175℃×22時間 | |
38 | 40 |
使用温度範囲
推奨値は-55〜200℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪化する為、シール性が下がる傾向があります。ご注意下さい。
圧力特性
最高圧力の推奨値は0.5MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性はバックアップリングの併用で向上させることが出来ます。
耐薬品性
極めて優秀です。あらゆる薬品に耐性を有し、様々なゴム材質の中でも秀でています。Oリングの耐薬品性(接触流体と材質の適合性)に於いてより多くの液体や気体に対する耐久性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。
薬品名 | 耐性 | 薬品名 | 耐性 |
---|---|---|---|
アセトアルデヒド | ◎ | ジメチルアセトアミド | ◎ |
アセトン | ◎ | ジエチルエーテル | ◎ |
アニリン | ◎ | 重油 | ◎ |
アンモニア水 | ◎ | シンナー | ◎ |
IPA | ◎ | スピンドル油 | ◎ |
エタノール | ◎ | 100℃水蒸気 | ◎ |
エチレングリコール | ◎ | テトラクロロエチレン | 〇 |
エチレンジアミン | 〇 | テトラヒドロフラン | ◎ |
N-メチル-2-ピロリドン | ◎ | 灯油 | ◎ |
エマルジョン系作動油 | ◎ | トリクロロエチレン | 〇 |
塩酸 | ◎ | トルエン | ◎ |
エンジン油 | ◎ | 動物油 | ◎ |
王水 | ◎ | ブチルアセテート | ◎ |
過酸化水素水 | ◎ | フッ酸 | × |
苛性カリ | ◎ | フレオンR134a | × |
苛性ソーダ | ◎ | 不活性フッ素オイル | × |
ガソリン | ◎ | ブレーキフルード(エーテル系) | 〇 |
カップグリス | ◎ | ヘキサン | ◎ |
ギア油 | ◎ | ベンゼン | ◎ |
キシレン | ◎ | ホルマリン | ◎ |
軽油 | ◎ | マシン油 | ◎ |
クロロホルム | 〇 | 水 | ◎ |
ケロシン | ◎ | 水系切削油 | ◎ |
酢酸 | ◎ | メタノール | ◎ |
酢酸エチル | ◎ | MEK | ◎ |
硝酸 | ◎ | メチルイソブチルケトン | ◎ |
植物油 | ◎ | モノエタノールアミン | ◎ |
次亜塩素酸ソーダ | ◎ | ラッカー | ◎ |
ジオキサン | ◎ | リン酸エステル系作動油 | ◎ |
四塩化炭素 | 〇 | 硫酸 | ◎ |
ジクロロメタン | ◎ | リチウムグリス | ◎ |
シリコングリス | ◎ | 鉱油系冷凍機油 | ◎ |
◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可
注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。
主な使用箇所
取扱注意点
〒130-0021
東京都墨田区緑3丁目4番10号
桜シール本社ビル