フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属するFEPM(アフラス)ゴム材質の低溶出タイプであるフロロパワーAPPは、高純度薬品や高純度プロセスでの使用を目的として開発された、極低溶出性のOリング用のゴム材質です。新たに開発された新型FEPMを基材とした特殊配合、及び徹底的にクリーン化された製造工程により、極めて高いレベルでの低溶出性を実現いたしました。アセトンやトルエン、メタノールのような溶解性の高い液体に対する金属イオン(3周期以降の元素)の溶出量が、最も溶出量が多くなる接液の初期段階に於いても製品重量当たり10ppb(0.000001%)未満となるように設計(参考データ)されています。同じく極低溶出グレードとしてラインナップされているフロロパワーDEP(極低溶出FFKM-E >10ppb未満)、フロロパワーFOP(極低溶出FFKO >3ppb未満)、及びフロロパワーFFP(極低溶出FFKM >0.5ppb未満)と併せ、高純度薬品の製造や半導体ウェハー洗浄装置などで高い効果を発揮します。
アフラス/AFLAS(AGC旭硝子社)の名称で広く知られる原料ゴム(ポリマー)のFEPM(テトラフルオロエチレンプロピレン系フッ素ゴム)は、一般的なフッ素ゴム(FKM)には無い耐強酸性や耐アルカリ性、耐アミン性、耐スチーム性といった特別な耐薬品性、更には耐放射線性や電気絶縁性などの珍しい性能を有している反面、Oリングをはじめとするシール材にとって重要な性能である圧縮永久歪み率などの物性については芳しくありませんでした。その上、圧縮成形に於いては加工性が著しく劣っていた為、形状や大きさによっては成形が困難な場合がありました。しかし、桜シール株式会社とAGC旭硝子社との共同研究で開発された改良型FEPM/新型アフラスを用いたフロロパワーAPPでは、それら不適な要素を解消、打破し、且つ耐熱性や耐薬品性も従来品より向上させました。
フロロパワーAPPは、同じく改良型FEPM/次世代アフラスを基材としているフロロパワーAPやフロロパワーAP90、フロロパワーAPCと比較して、桜シール独自の配合技術によって全ての溶出因子が抑止された、極低溶出性が最大の特徴となっています。尚、素手で製品に触れるなどすると、ナトリウムやカルシウムといった不純物が付着する原因となります。桜シールによる梱包はご使用の直前まで開封することなく維持し、製品を取り出す際にも細心の注意を払うようにして下さい。
* Oリング以外でも様々な形状の製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
* フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。
フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質は、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、ご使用の条件などを注意深くご確認ください。
フロロパワーAPPと溶出試験
フロロパワーAPPに対して行われた溶出試験のデータを一部公開いたします。
含有金属量の試験データ (単位:ppb) | |||||||||||||||||
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試験 条件 | 液体の種類: 塩酸 (HCl) 3.4% 液体の温度: 常温 (RT) 液 量: 100cc 試 験 片: P-26 サンプル数 N: 3個 浸 漬 時 間: 24時間(1日) 及び 168時間(1週間) 試 験 方 法: 灰化法 ICP-MS (誘導結合プラズマ質量分析計) | ||||||||||||||||
元素 (1) | 記号 | Li | Na | Mg | Al | K | Ca | Ti | Cr | ||||||||
和名 | リチウム | ナトリウム | マグネシウム | アルミニウム | カリウム | カルシウム | チタン | クロム | |||||||||
英名 | Lithium | Sodium | Magnesium | Aluminium | Potassium | Calcium | Titanium | Chromium | |||||||||
浸漬 時間 (h) | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | |
試料 | No.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.3 | 0.4 | 0.2 | <0.1 | 0.5 | 0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 |
No.2 | <0.1 | <0.1 | 0.1 | <0.1 | 0.2 | 0.1 | 0.6 | 0.3 | 0.2 | 0.1 | 0.9 | 0.2 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | |
No.3 | <0.1 | <0.1 | 0.1 | <0.1 | 0.3 | 0.1 | 0.7 | 0.3 | 0.3 | <0.1 | 1.4 | 0.9 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 |
元素 (2) | 記号 | Mn | Fe | Ni | Cu | Zn | Ag | Cd | Pb | ||||||||
和名 | マンガン | 鉄 | ニッケル | 銅 | 亜鉛 | 銀 | カドミウム | 鉛 | |||||||||
英名 | Manganese | Iron | Nickel | Copper | Zinc | Silver | Cadmium | Lead | |||||||||
浸漬 時間 (h) | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | 24 | 168 | |
試料 | No.1 | <0.1 | <0.1 | 1.4 | 1.3 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 |
No.2 | <0.1 | <0.1 | 1.9 | 1.9 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | |
No.3 | <0.1 | <0.1 | 2.0 | 1.2 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | 0.2 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 |
試験種類 | 項目 | フロロパワーAPP |
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常態物性試験 | 硬度 (JIS-A) | 68 |
引張強さ (MPa) | 16.8 | |
伸び率 (%) | 203 | |
100%引張応力 (MPa) | 7.2 | |
耐熱老化試験 | 試験条件 | 200℃×70時間 |
硬さ変化 | +1 | |
引張強さ変化率 (%) | +4 | |
伸び変化率 (%) | -1 | |
圧縮永久歪み試験 | 試験条件 | 200℃×22時間 |
圧縮永久歪み率 (%) | 28 |
使用温度範囲
推奨値は0〜200℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪化する為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。
圧力特性
最高圧力の推奨値は5MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性はバックアップリングの併用で向上させることが出来ます。
耐薬品性
強酸や強アルカリ、アミン、蒸気(スチーム)などに強い耐性を示します。その他、旧型FEPMによるフロロパワーAFと比較して、全ての耐薬品性が良化しています。Oリングの耐薬品性(接触流体と材質の適合性)に於いてより多くの液体や気体に対する耐久性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。
薬品名 | 耐性 | 薬品名 | 耐性 |
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アセトアルデヒド | × | ジメチルアセトアミド | ◎ |
アセトン | × | ジエチルエーテル | × |
アニリン | ◎ | シンナー | × |
アンモニア水 | ◎ | 150℃水蒸気 | ◎ |
IPA | ◎ | TMAH | ◎ |
アクリロニトリル | 〇 | テトラヒドロフラン | × |
エタノール | ◎ | 灯油 | 〇 |
エチレングリコール | ◎ | トリクロロエチレン | △ |
エチレンジアミン | ◎ | トルエン | × |
N-メチル-2-ピロリドン | × | 動物油 | ◎ |
塩酸 | ◎ | フッ酸 | ◎ |
エンジン油 | ◎ | フレオンR134a | × |
過酸化水素水 | ◎ | 不活性フッ素オイル | × |
苛性カリ | ◎ | ブレーキ油 | ◎ |
苛性ソーダ | ◎ | ヘキサン | 〇 |
ガソリン | △ | ベンゼン | × |
カップグリス | ◎ | マシン油 | ◎ |
ギア油 | ◎ | 水系切削油 | ◎ |
キシレン | △ | モノエタノールアミン | ◎ |
軽油 | 〇 | メタノール | ◎ |
クロロホルム | △ | MEK | × |
酢酸 | 〇 | メチルイソブチルケトン | × |
酢酸エチル | △ | ラッカー | × |
硝酸 | ◎ | リン酸エステル系作動油 | ◎ |
植物油 | ◎ | 蟻酸 | 〇 |
次亜塩素酸ソーダ | ◎ | リチウムグリス | ◎ |
四塩化炭素 | × | 鉱油系冷凍機油 | ◎ |
シリコングリス | ◎ | トリエチルアミン | ◎ |
◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可
注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。
主な使用箇所
取扱注意点
〒130-0021
東京都墨田区緑3丁目4番10号
桜シール本社ビル