フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属するFEPM(アフラス)ゴム材質の透明タイプであるフロロパワーAPC(Fluoro-Power APC/FP-APC)は、透明色のフッ素ゴムでありながら熱硬化性エラストマーを基材とした、圧縮成形によるノンフィラーのOリング材質です。色合いに透明感を持たせることが非常に困難なフッ素系統のゴム材質は、その大半が熱可塑性エラストマーによるものでした。しかしフロロパワーAPCは新たに開発された新型FEPMを基材としており、熱可塑タイプとは異なる高い復元性を有していることから、シール材として大変有効です。また、FEPM材に由来する高い耐薬品性を有し、且つカーボンブラック不使用なのでカーボン類を嫌うプロセスに有用である他、硬度が低く(A55±5)設定されていることから圧縮力の低い場所での使用にも適しています。尚、耐熱性については、シール性能への影響は殆ど無いながら100℃以上の環境下で連続使用すると変色する(黒色に近づいていく)ことから、敢えて控え目な表記としています。
アフラス/AFLAS(AGC旭硝子社)の商品名で広く知られる原料ゴム(ポリマー)のFEPM(テトラフルオロエチレンプロピレン系フッ素ゴム)は、一般的なフッ素ゴム(FKM)には無い耐強酸性や耐アルカリ性、耐アミン性、耐スチーム性といった特別な耐薬品性、更には低着香性や耐放射線性、電気絶縁性などの珍しい性能を有している反面、Oリングをはじめとするシール材にとって重要な性能である圧縮永久歪み率などの物性については芳しくありませんでした。その上、圧縮成形に於いては加工性が著しく劣っていた為、形状や大きさによっては成形が困難な場合がありました。しかし、桜シール株式会社とAGC旭硝子社との共同研究で開発された改良型FEPM/新型アフラスを用いたフロロパワーAPCでは、それら不適な要素を解消、打破し、且つ耐熱性や耐薬品性も従来品より向上させました。
フロロパワーAPCは、同じく改良型FEPM/新型アフラスを基材としているフロロパワーAPやフロロパワーAP90、フロロパワーAPPと比較して、桜シール独自の配合技術による透明色と低硬度が最大の特長となっています。同じく硬さが軟らかく抑えられていながらもフッ素ゴムの持つ秀でた耐薬品性を兼ね備えるFFKO(サイフェル)系統のフロロパワーFOGと併せ、溝材質の強度が弱い箇所などで代替不能な効力を発揮します。
* Oリング以外でも様々な形状の製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
* フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。
フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質は、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、ご使用の条件などを注意深くご確認ください。
フロロパワーAPCの測定値
試験種類 | 項目 | フロロパワーAPC |
---|---|---|
常態物性試験 | 硬度 (JIS-A) | 55 |
引張強さ (MPa) | 15.7 | |
伸び率 (%) | 337 | |
100%引張応力 (MPa) | 1.4 | |
耐熱老化試験 | 試験条件 | 150℃×70時間 |
硬さ変化 | 0 | |
引張強さ変化率 (%) | -41 | |
伸び変化率 (%) | -32 | |
圧縮永久歪み試験 | 試験条件 | 200℃×70時間 |
圧縮永久歪み率 (%) | 32 |
使用温度範囲
推奨値は0〜150℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪化する為、シール性が下がってしまいます。尚、フロロパワーAPCの使用温度上限については、シール性への影響は殆ど無いながら100℃以上の環境下で連続使用すると変色する(黒色に近付いていく)ことから、温度上限を低めに抑えて表記しています。
圧力耐性
最高圧力の推奨値は2MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性はバックアップリングの併用で向上させることが出来ます。
耐薬品性
強酸や強アルカリ、アミン、蒸気(スチーム)などに強い耐性を示します。その他、旧型FEPMによるフロロパワーAFと比較して、全ての耐薬品性が良化しています。Oリングの耐薬品性(接触流体と材質の適合性)に於いてより多くの液体や気体に対する耐久性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。
薬品名 | 耐性 | 薬品名 | 耐性 |
---|---|---|---|
アセトアルデヒド | × | ジメチルアセトアミド | ◎ |
アセトン | × | ジエチルエーテル | × |
アニリン | ◎ | シンナー | × |
アンモニア水 | ◎ | 150℃水蒸気 | ◎ |
IPA | ◎ | TMAH | ◎ |
アクリロニトリル | 〇 | テトラヒドロフラン | × |
エタノール | ◎ | 灯油 | 〇 |
エチレングリコール | ◎ | トリクロロエチレン | △ |
エチレンジアミン | ◎ | トルエン | × |
N-メチル-2-ピロリドン | × | 動物油 | ◎ |
塩酸 | ◎ | フッ酸 | ◎ |
エンジン油 | ◎ | フレオンR134a | × |
過酸化水素水 | ◎ | 不活性フッ素オイル | × |
苛性カリ | ◎ | ブレーキフルード(エーテル系) | × |
苛性ソーダ | ◎ | ヘキサン | 〇 |
ガソリン | △ | ベンゼン | × |
カップグリス | ◎ | マシン油 | ◎ |
ギア油 | ◎ | 水系切削油 | ◎ |
キシレン | △ | モノエタノールアミン | ◎ |
軽油 | 〇 | メタノール | ◎ |
クロロホルム | △ | MEK | × |
酢酸 | 〇 | メチルイソブチルケトン | × |
酢酸エチル | △ | ラッカー | × |
硝酸 | ◎ | リン酸エステル系作動油 | ◎ |
植物油 | ◎ | 蟻酸 | 〇 |
次亜塩素酸ソーダ | ◎ | リチウムグリス | ◎ |
四塩化炭素 | × | 鉱油系冷凍機油 | ◎ |
シリコングリス | ◎ | トリエチルアミン | ◎ |
◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可
注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。
主な使用箇所
取扱注意点
〒130-0021
東京都墨田区緑3丁目4番10号
桜シール本社ビル