フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属する3元系(3元共重合体)フッ素ゴム材質の耐寒(耐低温)タイプであるフロロパワーDL(Fluoro-Power DL/FP-DL)は、一般的なフッ素ゴム(FKM)系のOリング用のゴム材質では対応することが難しいマイナス30℃付近の低温領域でもゴム弾性を維持できる耐寒性を持つ、低温用の3元系フッ素ゴム材質です。標準の3元系フッ素ゴムであるフロロパワー3Fと比較して若干ながら劣る部分があるものの、強酸や非極性溶剤に対する耐性を含む非常に優秀な耐薬品性や耐油性、更には耐スチーム性(耐蒸気性)などといった特性を兼ね備えています。また、物理的強度にも優れた材質です。
* Oリング以外でも様々な形状の製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
* フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。
化学構造
2フッ化ビニリデン・パーフルオロメチルビニルエーテル(PfMVE)・4フッ化エチレン3元共重合体です。3元系フッ素ゴムに類似した構造を持っていますが、6フッ化プロピレンをPfMVEに置き換えることで耐低温性能を良化させた点で大きく異なります。また、PfMVEは6フッ化プロピレンと同様に炭化水素を含まない分子なので、耐溶剤性でも3元系フッ素ゴムに近い性能を有しています。
関連する法規制等
フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質は、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、ご使用の条件などを注意深くご確認ください。
フロロパワーDL
フロロパワーDLの物性値
代表的な2元系フッ素ゴムであるFKM-70(4D)の規格値をおおよそクリアできる性能を有しています。参考としてJIS B2401の規格値を併記します。
試験種類 | 項目 | フロロパワーDL (測定値) | 現JIS | 旧JIS |
---|---|---|---|---|
常態物性試験 | 硬度 (JIS-A) | 68 | 70±5 | 70±5 |
引張強さ (MPa) | 19.4 | > 10.0 | > 9.8 | |
伸び率 (%) | 284 | > 170 | > 200 | |
100%引張応力 (MPa) | 3.9 | > 2.0 | > 1.9 | |
耐熱老化試験 | 試験条件 | 200℃×70時間 | 230℃×72時間 | 230℃×24時間 |
硬さ変化 | +1 | < +5 | < +5 | |
引張強さ変化率 (%) | +9 | > -10 | > -10 | |
伸び変化率 (%) | -5 | > -25 | > -25 | |
圧縮永久歪み試験 | 試験条件 | 200℃×70時間 | 200℃×72時間 | 175℃×22時間 |
圧縮永久歪み率 (%) | 22 | < 40 | < 40 |
使用温度範囲
推奨値は−35〜200℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪くなる為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。
圧力特性
最高圧力の推奨値は5MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性はバックアップリングの併用で向上させることが出来ます。
耐薬品性
標準の3元系フッ素ゴムであるフロロパワー3Fとほぼ同等の性能を有しています。Oリングの耐薬品性 (接触流体と材質の適合性)にてより多くの液体や気体に対する耐性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。
薬品名 | 耐性 | 薬品名 | 耐性 |
---|---|---|---|
アセトン | × | ジメチルアセトアミド | × |
アニリン | ◎ | ジエチルエーテル | × |
アンモニア水 | △ | シンナー | × |
IPA | ◎ | 150℃水蒸気 | ◎ |
エタノール | ◎ | テトラクロロエチレン | △ |
エチレングリコール | ◎ | テトラヒドロフラン | × |
エチレンジアミン | × | 灯油 | ◎ |
N-メチル-2-ピロリドン | × | トリクロロエチレン | △ |
塩酸 | ◎ | トルエン | 〇 |
エンジン油 | ◎ | 動物油 | ◎ |
過酸化水素水 | ◎ | フッ酸 | ◎ |
苛性カリ | × | フレオンR134a | × |
苛性ソーダ | × | 不活性フッ素オイル | △ |
ガソリン | ◎ | ブレーキフルード(エーテル系) | × |
カップグリス | ◎ | ヘキサン | 〇 |
ギア油 | ◎ | ベンゼン | △ |
キシレン | △ | マシン油 | ◎ |
軽油 | ◎ | 水系切削油 | ◎ |
クロロホルム | △ | メタノール | 〇 |
ケロシン | ◎ | MEK | × |
酢酸 | × | メチルイソブチルケトン | × |
無水酢酸 | × | モノエタノールアミン | × |
酢酸エチル | × | ラッカー | × |
硝酸 | ◎ | リン酸エステル系作動油 | ◎ |
植物油 | ◎ | 希硫酸 | ◎ |
次亜塩素酸ソーダ | 〇 | 硫酸 | ◎ |
四塩化炭素 | △ | リチウムグリス | ◎ |
シリコングリス | ◎ | 鉱油系冷凍機油 | ◎ |
◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可
注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。
主な使用箇所
取扱注意点
〒130-0021
東京都墨田区緑3丁目4番10号
桜シール本社ビル