フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属する3元系(3元共重合体)フッ素ゴム材質の標準タイプであるフロロパワー3F(Fluoro-Power 3F/FP-3F)は、フッ素ゴム(FKM)の中でも2元系フッ素ゴムを基材としているFKM-70(4D)のような汎用材質と比較して、化学的にも物理的にも大きく異なる優秀な性能を有しているOリング用のゴム材質です。耐薬品性に優れ、強酸や非極性溶剤、スチーム(蒸気)などに対する耐久性を保持している他、機械特性の面でも大変良好です。尚、耐極性溶剤性や耐アルカリ性で劣る点は、2元系フッ素ゴムと大差ありません。それらの薬品に対しては、フロロパワーFFやフロロパワーDEBなどの材質を使用して下さい。
* Oリング以外でも様々な形状の製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
* フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。
化学構造
2フッ化ビニリデン・6フッ化プロピレン・4フッ化エチレン3元共重合体です。2元系フッ素ゴムと異なるのは4フッ化エチレンが重合している点で、その違いが2フッ化ビニリデンの成分とそれに含まれるCH結合を減らし、化学的に強い結合を生み出しています。また、CFとCH2の結合が無くなることで加水分解にとても強くなる為、耐スチーム性も備わっています。
関連する法規制等
フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質は、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、ご使用の条件などを注意深くご確認ください。
フロロパワー3Fの物性値
参考比較資料として、FKM-70(JIS B2401: 2012)及び4種D(JIS B2401: 2005)の規格値を併記いたします。
試験種類 | 項目 | フロロパワー3F (測定値) | 現JIS | 旧JIS |
---|---|---|---|---|
常態物性試験 | 硬度 (JIS-A) | 77 | 70±5 | 70±5 |
引張強さ (MPa) | 24.4 | > 10.0 | > 9.8 | |
伸び率 (%) | 178 | > 170 | > 200 | |
100%引張応力(MPa) | 11.4 | > 2.0 | > 1.9 | |
耐熱老化試験 | 試験条件 | 200℃×70時間 | 230℃×72時間 | 230℃×24時間 |
硬さ変化 | 0 | < +5 | < +5 | |
引張強さ変化率 (%) | +6 | > -10 | > -10 | |
伸び変化率 (%) | -18 | > -25 | > -25 | |
圧縮永久歪み試験 | 試験条件 | 200℃×70時間 | 200℃×72時間 | 175℃×22時間 |
圧縮永久歪み率 (%) | 24 | < 40 | < 40 |
使用温度範囲
推奨値は−10〜200℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪くなる為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。
圧力特性
最高圧力の推奨値は5MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性はバックアップリングの併用で向上させることが出来ます。
耐薬品性
強酸や蒸気(スチーム)に対する耐久性などを有し、FKM-70(4D)よりも優れています。Oリングの耐薬品性(接触流体と材質の適合性)にてより多くの液体や気体に対する耐性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。
薬品名 | 耐性 | 薬品名 | 耐性 |
---|---|---|---|
アセトン | × | ジメチルアセトアミド | × |
アニリン | ◎ | ジエチルエーテル | × |
アンモニア水 | △ | シンナー | × |
IPA | ◎ | 150℃水蒸気 | ◎ |
エタノール | ◎ | テトラクロロエチレン | △ |
エチレングリコール | ◎ | テトラヒドロフラン | × |
エチレンジアミン | × | 灯油 | ◎ |
N-メチル-2-ピロリドン | × | トリクロロエチレン | △ |
塩酸 | ◎ | トルエン | 〇 |
エンジン油 | ◎ | 動物油 | ◎ |
過酸化水素水 | ◎ | フッ酸 | ◎ |
苛性カリ | × | フレオンR134a | × |
苛性ソーダ | × | 不活性フッ素オイル | △ |
ガソリン | ◎ | ブレーキフルード(エーテル系) | × |
カップグリス | ◎ | ヘキサン | 〇 |
ギア油 | ◎ | ベンゼン | △ |
キシレン | △ | マシン油 | ◎ |
軽油 | ◎ | 水系切削油 | ◎ |
クロロホルム | △ | メタノール | 〇 |
ケロシン | ◎ | MEK | × |
酢酸 | × | メチルイソブチルケトン | × |
無水酢酸 | × | モノエタノールアミン | × |
酢酸エチル | × | ラッカー | × |
硝酸 | ◎ | りん酸エステル系作動油 | ◎ |
植物油 | ◎ | 希硫酸 | ◎ |
次亜塩素酸ソーダ | 〇 | 硫酸 | ◎ |
四塩化炭素 | △ | リチウムグリス | ◎ |
シリコングリス | ◎ | 鉱油系冷凍機油 | ◎ |
◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可
注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。
主な使用箇所
取扱注意点
〒130-0021
東京都墨田区緑3丁目4番10号
桜シール本社ビル