フロロパワーFQ(フロロシリコン)の概要

フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属するFVMQ(フルオロシリコーン)ゴム材質のフロロパワーFQ(Fluoro-Power FQ/FP-FQ)は、シリコンゴム特有の広い温度帯域で使用可能な耐熱性耐寒性を持っています。特に低温領域では、ガラス転移点が−80℃であることから−70℃以下でもゴム弾性を維持し、数あるOリング用のゴム材質の中でも最も優れた耐寒性を有しています。また、通常のシリコンゴムには無い耐油性や耐燃料油性、耐アルコール性などといった特性も備えており、寒冷地の油圧機器などで多く使用されています。尚、他のシリコンゴムと同様に機械特性には劣り、強度では優れていません。動的部分や高圧シール等でのご使用は、十分ご注意下さい。

 * Oリング以外でも様々な形状の製品製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
 * フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。

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>>>材質の一覧(ラインナップと性能)
>>>材質名称の対比(規格/メーカー)

化学構造

フルオロアルキル置換シロキサン縮合物です。アルキル・シロキサン縮合物(VMQ)に含まれるアルキル基の一部をフッ素化したもので、その構造がシリコンゴムには無い耐油性や耐アルコール性を生み出し、また最大の特徴である耐寒性を向上させています。尚、ポリマーの基本構造はあくまでもVMQである為、耐薬品性は活性が弱めの薬品や非極性溶剤への耐性を有する程度です。また架橋構造もVMQと殆ど変わらないので、特に機械特性は非常に低く、破断強度や引裂強度も他のゴム材質と比較して非常に低いレベルに有ります。

 

関連する法規制等

  • 食品衛生法(厚生労働省告示第595号 旧厚生省告示第370号 ゴム製の器具又は容器包装)に適合しています。
  • RoHS指令10物質(Pb, Cd, Hg, Cr6+, PBB, PBDE, DEHP, BBP, DBP, DIBP)の含有量は閾値以下です。
  • REACH規制対象物質の意図的添加はいたしておりません。
  • TSCA PBT5物質(DecaBDE、2,4,6TTBP、PIP(3:1)、HCBD、PCTP)の意図的な添加は行っておりません。

フロロパワーFQ(フロロシリコン)の特性値や物性値

フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質は、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、ご使用の条件などを注意深くご確認ください。

 

フロロパワーFQの物性値

物性面は通常のシリコンゴム材と同レベルです。参考として、VMQ-70 (4C)のJIS規格値を併記します。

試験種類 項目 フロロパワーFQ
(測定値)

(参考)現JIS

JIS B2401 :2012
VMQ-70

(参考)旧JIS

JIS B2401:2005
4種C

常態物性試験 硬度 (JIS-A) 71 70±5 70±5
引張強さ (MPa) 8.8 > 3.5 > 3.4
伸び率 (%) 268 > 60 > 60
100%引張応力 (MPa) 3.7
耐熱老化試験 試験条件 200℃×70時間 230℃×72時間 230℃×24時間
硬さ変化 +2 < +10 < +10
引張強さ変化率 (%) -9 > -10 > -10
伸び変化率 (%) -12 > -25 > -25
圧縮永久歪み試験 試験条件 175℃×22時間 175℃×72時間 175℃×22時間
圧縮永久歪み率 (%) 8 < 30 < 30

使用温度範囲

推奨値は−70〜200℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪くなる為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。

 

圧力特性

最高圧力の推奨値は0.5MPaで、芳しくありません。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性バックアップリングの併用で向上させることが出来ます。

 

耐薬品性

耐油性(耐燃料油性)に優れます。但し、溶剤やアルカリ性薬品には適していません。Oリングの耐薬品性 (接触流体と材質の適合性)にてより多くの液体や気体に対する耐性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。

薬品名 耐性 薬品名 耐性
アセトン × ジメチルアセトアミド ×
アニリン ジエチルエーテル ×
アンモニア水 シンナー ×
IPA 150℃水蒸気
エタノール テトラクロロエチレン ×
エチレングリコール テトラヒドロフラン ×
エチレンジアミン × 灯油
N-メチル-2-ピロリドン × トリクロロエチレン ×
塩酸 トルエン ×
エンジン油 動物油
過酸化水素水 フッ酸
苛性カリ × フレオンR134a ×
苛性ソーダ × 不活性フッ素オイル
ガソリン ブレーキ油
カップグリス ヘキサン
ギア油 ベンゼン ×
キシレン × マシン油
軽油 水系切削油
クロロホルム × メタノール
ケロシン MEK ×
酢酸 メチルイソブチルケトン ×
無水酢酸 モノエタノールアミン ×
酢酸エチル × ラッカー ×
硝酸 リン酸エステル系作動油
植物油 希硫酸
次亜塩素酸ソーダ 硫酸
四塩化炭素 × リチウムグリス
シリコングリス 鉱油系冷凍機油

◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可

注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。

 

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フロロパワーFQ(フロロシリコン)の使用について

主な使用箇所

  • 寒冷地仕様の油圧機器、内燃機関
  • 熱媒、冷媒のシール材
  • メカニカルシールのシール材
  • 食品機器のシール材
  • 化学プラント設備の密閉箇所
  • 電子材料製造設備のシール材

 

取扱注意点

  • 耐候性に優れ、光や熱による外部影響を受けにくい材質ではありますが、念のため湿度の低い冷暗所で保存して下さい。
  • 負荷が掛からない状態で保存して下さい。伸長や圧縮状態で保存すると変形や亀裂が発生しやすくなります。
  • 推奨温度や圧力を超えてのご使用は、急激な劣化を起こします。ご注意下さい。
  • 適さない流体との接触には十分注意して下さい。

 

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