NBR-90(1種B/1B/高硬度ニトリル)は、ニトリルゴム(NBR)をベースにしたOリング用のゴム材質で、耐油性を備えている他、硬度が高く(A90)設定されていることで耐圧性にも優れます。因みに、同じくニトリルゴム(NBR)を基材としている標準硬度(A70)のNBR-70-1(1種A/1A)と比較した場合、耐油性などの特性は大凡同等ながら、物性には明確な違いがあります。硬さの影響で強度が増していますが、伸び率などは低下しています。また、強度向上によってOリングが溝からはみ出すのを抑制する効果が高くなる反面、つぶし代を確保する為の締め付けトルクが高くなるので、剛性の高い溝部が必要となります。尚、規格(JIS B 2401)材質としては、規格値と共に正式名称が1種B(1B)からNBR-90に更新されて久しいですが、未だに旧規格の名称も常用されています。
* Oリング以外でも様々な形状の製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
化学構造
アクリロニトリル・ブタジエン共重合物です。アクリロニトリルに含まれるニトリル基
(CN)が、優れた耐油性に寄与しています。主鎖構造に二重結合がある為、空気中の活性酸素と結合して主鎖が断裂してしまい、オゾンクラックが発生してしまうことがあります。
JISB2401で規定される規格値
規格(JIS B 2401)材質に於いて高圧力用のものとして一般的なこの材質は、名称が1種B(1B)からNBR-90に更新されて久しいですが、未だに旧規格の名称も常用されています。尚、現JIS規格(JISB2401:2012)で規定される「NBR-90」と旧JIS規格(JISB2401:2005)で規定される「1種B」では規格値が異なりますが、桜シールOリングはどちらの規格値もクリアしています。
試験種類 | 項目 | 現JIS JIS B2401:2012 NBR-90 | 旧JIS JIS B2401:2005 1種B |
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常態物性試験 | 硬度 (JIS-A) | 90±5 | 90±5 |
引張強さ (MPa) | > 14.0 | > 14.0 | |
伸び率 (%) | > 100 | > 100 | |
100%引張応力 (MPa) | ― | ― | |
耐熱老化試験 | 試験条件 | 120℃×72時間 | 120℃×70時間 |
硬さ変化 | < +10 | < +10 | |
引張強さ変化率 (%) | > -25 | > -25 | |
伸び変化率 (%) | > -55 | > -55 | |
圧縮永久歪み試験 | 試験条件 | 120℃×72時間 | 120℃×70時間 |
圧縮永久歪み率 (%) | < 40 | < 40 |
使用温度範囲
推奨値は−20〜100℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また、最低温度域では高硬度の影響も相俟ってゴム弾性を失い易く、シール性が特に下がりやすくなります。ご注意下さい。
圧力特性
最高圧力の推奨値は10MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性はバックアップリングの併用で向上させることが出来ます。
耐薬品性
耐鉱物油性に非常に優れるほか、活性の低い薬品には概ね使用可能です。Oリングの耐薬品性 (接触流体と材質の適合性)にてより多くの液体や気体に対する耐性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。
薬品名 | 耐性 | 薬品名 | 耐性 |
アセトン | × | 硝酸 | × |
アンモニア水 | △ | 水素ガス | ◎ |
IPA | △ | 水 | 〇 |
エタノール | 〇 | スピンドル油 | ◎ |
エチレングリコール | 〇 | 100℃水蒸気 | △ |
エチレンジアミン | △ | 石鹸水 | ◎ |
エマルジョン系作動油 | ◎ | 炭酸水 | ◎ |
塩酸 | × | 炭酸ガス | △ |
エンジン油 | ◎ | 灯油 | 〇 |
海水 | 〇 | トルエン | × |
過酸化水素水 | 〇 | 動物油 | △ |
苛性ソーダ | △ | フッ酸 | × |
ガソリン | △ | フレオンR134a | △ |
カップグリス | ◎ | ベンゼン | × |
ギア油 | ◎ | マシン油 | ◎ |
空気 | ◎ | ミルク | △ |
軽油 | 〇 | 水系切削油 | △ |
ケロシン | △ | メタノール | × |
食酢 | 〇 | MEK | × |
酢酸エチル | × | ラッカー | × |
酸素 | △ | りん酸エステル系作動油 | × |
植物油 | △ | 希硫酸 | 〇 |
次亜塩素酸ソーダ | △ | リチウムグリス | ◎ |
シリコングリス | ◎ | 鉱油系冷却機油 | 〇 |
重油 | △ | 硫化水素 | × |
◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可
注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。
主な使用箇所
取扱注意点
〒130-0021
東京都墨田区緑3丁目4番10号
桜シール本社ビル