Oリングの故障 (不具合の原因と対策)

Oリングの故障に係る現象を分類した技術資料です。様々な不具合の外観状態を図解したうえで、原因と対策について解説いたします。使用環境(温度、圧力、接触流体など)に対してOリング選定溝の寸法設定といった設計面、若しくは使用方法保管方法といった取扱方法が不適切であると、Oリングは破損してシール機能を失い、漏れなどが発生してしまいます。不具合事象を正しく理解して、問題を解決したり未然に防いだりする為にお役立て下さい。尚、Oリング自体の不具合については、外観基準、並びに不良と検査を参照して下さい。

現象 状態 原因 対策
ねじれ-Oリングの故障
ねじれ Oリングがねじれて変形している。

① 装着時にねじれた。
② 摺動面の粗さが均一でなかった。
③ 運動速度が速かった。
④ 偏心運動をしていた。

① 装着方法を改善(グリスの塗布など)する。
② 摺動面の仕上げを改善する。
③ リップパッキンに変更する。
④ 偏心運動をなくす。

 

 

かじり、むしれ-Oリングの故障
かじり Oリングが部分的に切り取られ、えぐられている。 ① 装着時に穴部や軸部で欠損した。
② 装着時にねじ山などで欠損した。
取付け部の面取りを改善する。
装着方法を改善(治具の使用など)する。
むしれ Oリングがつぶし代の分だけ切り取られ、えぐられている。 ① Oリングの線径に対して浅い溝に無理な装着をした。 溝寸法を変更する。
はみ出し-Oリングの故障
はみ出し Oリングの内周または外周面が桂剥きされたようになっている。

① 圧力条件(高圧)に対して耐圧性能が低かった。または溝部の隙間が影響した。

① 以下を複合的に検討する。
はみ出し詳細
A) Oリング材質硬度を見直す。
B) 溝部の隙間を見直す。
C) バックアップリングを併用する。

へたり-Oリングの故障
へたり Oリングが溝の断面形状にならって変形している。

つぶし代や温度条件(高温、若しくは低温と高温を繰り返して使用)が影響した。

① 以下を複合的に検討する。
A) Oリング材質を変更する。
B) 溝寸法を変更する。
C) 温度条件を緩和(シール部分の冷却など)する。

硬化-Oリングの故障
硬化 Oリングが硬くなり、曲げると簡単に亀裂が入る。

① 温度条件(高温)に対して耐熱性能が低かった。

② シール対象に対する耐薬品性能が低かった。

Oリング材質を変更、若しくは温度条件を緩和(シール部分の冷却など)をする。
Oリング材質を変更する。

膨潤-Oリングの故障
膨潤 Oリングが全体的に軟化して膨張し、ぷよぷよになっている。

① シール対象に対する耐油性能耐薬品性能が低かった。
② 機器を軽油やガソリンなどで洗浄した。

Oリング材質を変更する。
② 洗浄剤が残らないように除去する(可能ならOリングごと洗浄を行わない)。

傷-Oリングの故障
Oリングの内周または外周面に傷がついている。

① 装着時にねじ山などで傷つけた。

装着方法を改善(治具の使用など)する。

オゾン劣化-Oリングの故障
オゾン劣化 Oリングの表面全体に細かい亀裂が生じ、ひび割れたようになっている。

① 環境(オゾン発生箇所や外気と接触など)に対して耐候性能が低かった。

Oリングの材質を変更する。
② Oリングが直接外気に触れ難いようにする。
A) 保管方法を改善する。
B) Oリング表面にグリスなどを塗布する。

全面摩耗-Oリングの故障
全面摩耗 Oリングが全体的に擦り減っている。

① 摺動面が粗かった。
② 潤滑が不十分であった。
つぶし代が大き過ぎた。

① 摺動面の仕上げを改善する。
② 十分な量の潤滑剤を使用する。
溝寸法を変更する。

部分摩耗-Oリングの故障
部分摩耗 Oリングが部分的に擦り減っている。

① 摺動面に傷があった。
② ごみや金属粉などの異物が混入していた。

① 摺動面の仕上げを改善する。
② 洗浄して異物を除去し、フィルターやダストシールを使用する。