EPDM-70(EPT/エチレンプロピレンゴム)は、耐候性・耐水性・耐薬品性に優れるOリング用のゴム材質です。原材料のエチレンプロピレンゴム(EPDM)は典型的な炭化水素化合物なので耐鉱物油性は劣りますが、合成ゴム系の中では高い耐熱性と耐寒性を備えています。現在、水道水に利用されているシール材の殆どはEPDMです。尚、新たな規格(JIS B 2401)材質として規格値と正式名称が与えられたEPDM-70ですが、旧JISの3種(耐動植物油用)やJASO F 404の5種とは別に、以前から汎用材質としてEPDMの名称で広く流通していました。
* Oリング以外でも様々な形状の製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
化学構造
エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合物です。ジエンを含まないエチレンとプロピレンのみの重合体(EPM)の方が耐熱性や耐薬品性に優れますが、加工性の問題が多く安定した生産が出来ない為、Оリング材質としてはEPDMが採用されています。よって、一般的にエチレンプロピレンゴムとはEPDMを指しますが、正確にはEPMを指しています。また、EPTと呼ばれることも多いですが、これはエチレンプロピレンターポリマーの略で、EPDMと同義です。
EPDMには、ジエン成分の違いにより3種類の構造が有りますが、現在世界的に流通しているものはENBタイプ(下記①)が殆どで、DCPタイプ(下記②)は若干量、HDタイプ(下記③)に至っては殆ど存在しません。尚、Оリング材質の性能としてはどれを使用してもあまり違いはありません。
EPDM-70の規格値
規格(JIS B 2401)材質のひとつとなる以前から広く流通していたEPDM-70ですが、現JIS規格(JIS B 2401:2012)にて名称と規格値が定められるまでは、公的規格の中では旧JIS 規格の3種(耐動植物油用)やJASOF404規格の5種(クーラント液用)として採用されることがある程度でした。当社のEPDM-70は、現JIS(JIS B2401:2012)に於けるEPDM-70、並びにJASO F404に於ける5種の規格値をクリアしています。但し、旧JIS(JIS B2041:2005)に於ける3種については、別途専用配合の材質となります。ご注意ください。
試験種類 | 項目 | 現JIS | 旧JIS | 自動車規格 |
---|---|---|---|---|
常態物性試験 | 硬度 (JIS-A) | 70±5 | 70±5 | 70±5 |
引張強さ (MPa) | > 10.0 | > 9.8 | > 9.8 | |
伸び率 (%) | > 150 | > 150 | > 150 | |
100%引張応力 (MPa) | ― | > 2.7 | > 2.7 | |
耐熱老化試験 | 試験条件 | 100℃×72時間 | 100℃×70時間 | 120℃×70時間 |
硬さ変化 | < +10 | < +10 | < +10 | |
引張強さ変化率 (%) | > -15 | > -15 | > -20 | |
伸び変化率 (%) | > -45 | > -45 | > -40 | |
圧縮永久歪み試験 | 試験条件 | 100℃×72時間 | 100℃×70時間 | 120℃×70時間 |
圧縮永久歪み率 (%) | < 25 | < 25 | < 40 |
使用温度範囲
推奨値は−40〜130℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪くなる為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。
圧力特性
最高圧力の推奨値は4MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性はバックアップリングの併用で向上させることが出来ます。
耐薬品性
耐無機薬品性や耐溶剤性に優れていますが、耐鉱物油性は劣ります。Oリングの耐薬品性 (接触流体と材質の適合性)にてより多くの液体や気体に対する耐性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。尚、EPDM系の材質は、種々の中にあって充填材や可塑剤の添加比率が非常に高いOリング材質です。薬品によっては抽出現象が発生し、配合剤の放出でOリングが痩せ細ったり汚染が引き起こされたりすることがあります。ご注意下さい。
薬品名 | 耐性 | 薬品名 | 耐性 |
---|---|---|---|
アセトアルデヒド | 〇 | ジメチルアセトアミド | △ |
アセトン | 〇 | ジエチルエーテル | × |
アニリン | 〇 | シンナー | △ |
アンモニア水 | ◎ | 100℃水蒸気 | 〇 |
IPA | ◎ | テトラクロロエチレン | × |
エタノール | ◎ | テトラヒドロフラン | × |
エチレングリコール | ◎ | 灯油 | × |
エチレンジアミン | 〇 | トリクロロエチレン | × |
N-メチル-2-ピロリドン | × | トルエン | × |
塩酸 | △ | 動物油 | ◎ |
エンジン油 | × | フッ酸 | △ |
過酸化水素水 | ◎ | フレオンR134a | × |
苛性カリ | ◎ | 不活性フッ素オイル | ◎ |
苛性ソーダ | ◎ | ブレーキフルード(エーテル系) | × |
ガソリン | × | ヘキサン | × |
カップグリス | × | ベンゼン | × |
ギア油 | × | マシン油 | × |
キシレン | × | 水 | ◎ |
軽油 | × | 水系切削油 | △ |
クロロホルム | × | メタノール | 〇 |
ケロシン | × | MEK | △ |
酢酸 | 〇 | メチルイソブチルケトン | △ |
酢酸エチル | △ | モノエタノールアミン | △ |
硝酸 | × | ラッカー | △ |
植物油 | ◎ | りん酸エステル系作動油 | △ |
次亜塩素酸ソーダ | ◎ | 希硫酸 | ◎ |
四塩化炭素 | × | リチウムグリス | × |
シリコングリス | ◎ | 鉱油系冷凍機油 | × |
◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可
注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。
主な使用箇所
取扱注意点
〒130-0021
東京都墨田区緑3丁目4番10号
桜シール本社ビル