Oリング材質のCR-70(クロロプレンゴム/ネオプレン)は、耐油性と耐候性を兼ね備えるクロロプレンゴムを原材料とした一般的なゴム材質です。数ある合成ゴム材質の中でもかなり古くから使用されているCR-70ですが、代表的なOリング材質のNBR-70-1(1A)と比較すると機械特性が若干劣り、どちらかと言えばOリングよりもゴム板や電線被覆などで使われることが多い材質です。尚、CR-70は現行の規格(JIS B 2401)材質ではありませんが、準規格(JIS B 2401規格外)材質として広く流通している汎用材質のひとつです。
* Oリング以外でも様々な形状の製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
化学構造
クロロプレン重合物です。他のジエン構造の合成ゴムと類似した特性を有していますが、
Cl置換基を持っているので耐油性が高く、2重結合に酸素が結び付き難いことから優れた耐候性を有します。またジエン系ゴムはシス構造ですが、CRはトランス構造なのでポリマーに強い結合力を生み出します。但し、主鎖に2重結合が含まれているので不安定な部分があり、耐熱性には劣ります。
関連する法規制等
CR-70の参考値
CR-70は、旧JIS(K6380 BⅢ710)に於いては規格材質として存在しましたが、現在の公的規格には記載がありません。よって当社では、先のJIS規格値を規準として採用し、準規格(JIS B 2401規格外)材質として扱っています。
試験種類 | 項目 | 旧JIS |
---|---|---|
常態物性試験 | 硬度 (JIS-A) | 70±5 |
引張強さ (MPa) | > 9.8 | |
伸び率 (%) | > 250 | |
100%引張応力 (MPa) | ― | |
耐熱老化試験 | 試験条件 | 100℃×70時間 |
硬さ変化 | < +15 | |
引張強さ変化率 (%) | > -15 | |
伸び変化率 (%) | > -40 | |
圧縮永久歪み試験 | 試験条件 | 100℃×70時間 |
圧縮永久歪み率 (%) | < 50 |
使用温度範囲
推奨値は−30〜100℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪くなる為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。
圧力特性
最高圧力の推奨値は4MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性はバックアップリングの併用で向上させることが出来ます。
耐薬品性
耐鉱物油性に非常に優れるほか、活性の低い薬品には概ね使用できます。但し、吸水性が有るので水を多く含む薬品にはあまり向いていません。Oリングの耐薬品性 (接触流体と材質の適合性)にてより多くの液体や気体に対する耐性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。
薬品名 | 耐性 | 薬品名 | 耐性 |
---|---|---|---|
アセトン | × | 硝酸 | × |
アンモニア水 | △ | 水素ガス | ◎ |
IPA | △ | 水道水 | 〇 |
エタノール | 〇 | スピンドル油 | ◎ |
エチレングリコール | 〇 | 100℃水蒸気 | △ |
エチレンジアミン | △ | 石鹸水 | ◎ |
エマルジョン系作動油 | △ | 炭酸水 | ◎ |
塩酸 | × | 炭酸ガス | 〇 |
エンジン油 | ◎ | 灯油 | 〇 |
海水 | 〇 | トルエン | × |
過酸化水素水 | 〇 | 動物油 | △ |
苛性ソーダ | △ | フッ酸 | × |
ガソリン | △ | フレオンR134a | △ |
カップグリス | ◎ | ベンゼン | × |
ギア油 | ◎ | マシン油 | ◎ |
空気 | ◎ | ミルク | △ |
軽油 | 〇 | 水系切削油 | 〇 |
ケロシン | △ | メタノール | × |
食酢 | 〇 | MEK | × |
酢酸エチル | × | ラッカー | × |
酸素 | 〇 | りん酸エステル系作動油 | × |
植物油 | △ | 希硫酸 | 〇 |
次亜塩素酸ソーダ | △ | リチウムグリス | ◎ |
シリコングリス | ◎ | 鉱油系冷凍機油 | 〇 |
重油 | △ | 硫化水素 | × |
◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可
注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。
主な使用箇所
取扱注意点
〒130-0021
東京都墨田区緑3丁目4番10号
桜シール本社ビル