NBR-70-1(1種A/1A/ニトリル)の概要

最も広く大量に使用されているOリング用のゴム材質であるNBR-70-1(1種A/1A/ニトリル)は、ニトリルゴム(NBR)が保持する耐油性をはじめ、安価であるにも関わらず耐摩耗性などの機械特性もバランス良く有しています。量販店などで販売されているOリングの殆どはこの材質です。尚、規格(JIS B 2401)材質としては、規格値と共に正式名称が1種A(1A)からNBR-70-1に更新されて久しいですが、未だに旧規格の名称も常用されています。

 * Oリング以外でも様々な形状の製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。

化学構造

アクリロニトリル・ブタジエン共重合物です。アクリロニトリルに含まれるニトリル基
(CN)が、優れた耐油性に寄与しています。主鎖構造に二重結合があることから活性な物質と結び付きやすく、空気中の活性酸素と結合して主鎖が断裂してしまい、オゾンクラックが発生してしまうことがあります。

関連する法規制等

  • 食品衛生法(厚生労働省告示第595号 旧厚生省告示第370号 ゴム製の器具又は容器包装)に適合しています。
  • RoHS指令10物質(Pb, Cd, Hg, Cr6⁺, PBB, PBDE, DEHP, BBP, DBP, DIBP)の含有量は閾値以下です。
  • REACH規制対象物質の意図的添加はいたしておりません。
  • TSCA PBT5物質(DecaBDE、2,4,6-TTBP、PIP(3:1)、HCBD、PCTP)の意図的な添加は行っておりません。

NBR-70-1(1種A/1A/ニトリル)の特性値や物性値

JISB2401で規定される規格値

規格(JIS B 2401)材質の中でも最も一般的で流通量の多いこの材質は、名称が1種A(1A)からNBR-70-1に更新されて久しいですが、未だに旧規格の名称も常用されています。尚、現JIS規格(JISB2401:2012)で規定される「NBR-70-1」と旧JIS規格(JISB2401:2005)で規定される「1種A」では規格値が異なりますが、桜シールOリングはどちらの規格値もクリアしています。

試験種類 項目 現JIS
JIS B2401:2012
NBR-70-1
旧JIS
JIS B2401:2005
1種A
常態物性試験 硬度 (JIS-A) 70±5 70±5
引張強さ (MPa) 10.0 9.8
伸び率 (%) 250 250
100%引張応力 (MPa) 2.5  2.7
耐熱老化試験 試験条件 120℃×72時間 120℃×70時間
硬さ変化  +10  +10
引張強さ変化率(%)  -15  -15
伸び変化率(%)  -45  -45
圧縮永久歪み試験 試験条件 120℃×72時間 120℃×70時間
圧縮永久歪み率 (%)  40  40

使用温度範囲

推奨値は−30〜100℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性が悪くなる為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。

 

圧力特性

最高圧力の推奨値は5MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性バックアップリングの併用で向上させることが出来ます。

 

耐薬品性

耐鉱物油性に非常に優れるほか、活性の低い薬品には概ね使用することが出来ます。Oリングの耐薬品性 (接触流体と材質の適合性)にてより多くの液体や気体に対する耐性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。

薬品名 耐性 薬品名 耐性
アセトン × 硝酸 ×
アンモニア水 水素ガス
IPA
エタノール スピンドル油
エチレングリコール 100℃水蒸気
エチレンジアミン 石鹸水
エマルジョン系作動油 炭酸水
塩酸 × 炭酸ガス
エンジン油 灯油
海水 トルエン ×
過酸化水素水 動物油
苛性ソーダ フッ酸 ×
ガソリン フレオンR134a
カップグリス ベンゼン ×
ギア油 マシン油
空気 ミルク
軽油 水系切削油
ケロシン メタノール ×
食酢 MEK ×
酢酸エチル × ラッカー ×
酸素 りん酸エステル系作動油 ×
植物油 希硫酸
次亜塩素酸ソーダ リチウムグリス
シリコングリス 鉱油系冷凍機油
重油 硫化水素 ×

◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可

注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。

>>>材質の一覧(ラインナップと性能)
>>>材質名称の対比(規格/メーカー)

NBR-70-1(1種A/1A/ニトリル)の使用について

主な使用箇所

  • 油空圧シリンダー、ピストン、ロッドの密閉部
  • ポンプのハウジング及び接続部
  • バルブのステム及び接続部
  • 継手のシール材
  • 産業用設備の密閉箇所
  • 容器の密閉材
  • 電子機器の防水、防塵材
  • 機械可動部のショックダンパー
  • 搬送ローラーの滑り止め
  • 駆動用の丸ベルト
  • 装飾品として

 

取扱注意点

  • なるべく早く使用して下さい。
  • 出来るだけ外気に触れない暗い場所で保管して下さい。特に、直射日光や照明の近くに放置するとクラックが発生しやすくなります。<耐候性に劣るOリングの保管
  • 負荷が掛からない状態で保存して下さい。伸長や圧縮状態で保存すると変形や亀裂が発生しやすくなります。
  • 推奨温度や圧力を超えてのご使用は、急激な劣化を起こします。ご注意下さい。
  • 適さない流体との接触には十分注意して下さい。

>>>材質の一覧(ラインナップと性能)
>>>材質名称の対比(規格/メーカー)