フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属する3元系(3元共重合体)フッ素ゴム材質の導電(帯電防止)タイプであるフロロパワーDD(Fluoro-Power DD/FP-DD)は、従来は絶縁体であるフッ素ゴムの電気抵抗を、炭素(カーボンブラック)を中心とした特殊配合によって低く抑えたOリング用のゴム材質です。通常は10¹⁰(Ω・cm)程度の体積固有抵抗であるフッ素ゴムに於いて10⁴(Ω・cm)程度の導電性が付与されており、静電気が溜まり難いことから帯電を防止する効果を備えています。また、低温用フッ素ゴムのフロロパワーDLをベース材にしていることから耐寒性に優れ、3元系フッ素ゴム特有の耐強酸性や耐非極性溶剤性といった耐薬品性及び耐油性、更には耐スチーム性(耐蒸気性)なども持ち合わせています。尚、フロロパワーDDが有する導電性は、静電防止レベルです。過大な電流はOリングに過度な熱を加えることとなり、損傷させてしまうのでご注意下さい。
* Oリング以外でも様々な形状の製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
* フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。
化学構造
2フッ化ビニリデン・パーフルオロメチルビニルエーテル(PfMVE)・4フッ化エチレン3元共重合体です。3元系フッ素ゴムの6フッ化プロピレンが分子間距離の長いパーフルオロメチルビニルエーテルに置換されており、導電性を良化させる炭素との相性が良い構造をしているほか、耐寒性にも優れています。また、パーフルオロメチルビニルエーテルも炭化水素を含まない分子であることから、3元系フッ素ゴムに迫る耐溶剤性を有しています。
関連する法規制等
フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質は、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、ご使用の条件などを注意深くご確認ください。
フロロパワーDDの導電性
体積固有抵抗は、測定値で2.5×10⁴(Ω・cm)です。通常、フッ素ゴム類は10¹⁰(Ω・cm)以上の体積固有抵抗となるので、フロロパワーDDが優れた導電性を有していることが分かります。
フロロパワーDDの測定値
試験種類 | 項目 | フロロパワーDD |
---|---|---|
常態物性試験 | 硬さ (JIS-A) | 80 |
引張強さ (MPa) | 22.2 | |
伸び率 (%) | 215 | |
100%引張応力 (MPa) | 9.2 | |
耐熱老化試験 | 試験条件 | 200℃×70時間 |
硬さ変化 | +2 | |
引張強さ変化率 (%) | +8 | |
伸び変化率 (%) | -15 | |
圧縮永久歪み試験 | 試験条件 | 200℃×70時間 |
圧縮永久歪み率 (%) | 34 |
使用温度範囲
推奨値は−35〜200℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また、最低温度域ではゴム弾性が悪くなる為、シール性が下がってしまいます。ご注意下さい。
圧力特性
推奨最高圧力は6MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性はバックアップリングの併用で向上させることが出来ます。
耐薬品性
標準の3元系フッ素ゴムであるフロロパワー3Fとほぼ同等の性能を有しています。Oリングの耐薬品性 (接触流体と材質の適合性)にてより多くの液体や気体に対する耐性の一覧を掲載しておりますので、下表と併せて参考にして下さい。
薬品名 | 耐性 | 薬品名 | 耐性 |
---|---|---|---|
アセトン | × | ジメチルアセトアミド | × |
アニリン | ◎ | ジエチルエーテル | × |
アンモニア水 | △ | シンナー | × |
IPA | ◎ | 150℃水蒸気 | ◎ |
エタノール | ◎ | テトラクロロエチレン | △ |
エチレングリコール | ◎ | テトラヒドロフラン | × |
エチレンジアミン | × | 灯油 | ◎ |
N-メチル-2-ピロリドン | × | トリクロロエチレン | △ |
塩酸 | ◎ | トルエン | 〇 |
エンジン油 | ◎ | 動物油 | ◎ |
過酸化水素水 | ◎ | フッ酸 | ◎ |
苛性カリ | × | フレオンR134a | × |
苛性ソーダ | × | 不活性フッ素オイル | △ |
ガソリン | ◎ | ブレーキ油 | ◎ |
カップグリス | ◎ | ヘキサン | 〇 |
ギア油 | ◎ | ベンゼン | △ |
◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可
注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。
主な使用箇所
取扱注意点
〒130-0021
東京都墨田区緑3丁目4番10号
桜シール本社ビル