フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属するFFKM材質の耐プラズマ・O2ラジカル用の中級グレードであるフロロパワーFFR(Fluoro-Power FFR/FP-FFR)は、ラジカル化したプロセスガスに因るクラックや重量減少を抑制しつつ、パーティクル汚染を防止できる耐プラズマ性を備えたOリング用ゴム材質です。特に酸素(O2)ラジカルは、ハロゲン元素で構成された反応性ガス(CF4, NF3, HBr, CL2, NH3, SiH4など)ラジカルと比較して、Oリングに含まれる原料ゴムや充填剤に強く悪影響を及ぼします。その為、酸素プラズマ用途では、耐プラズマ性に優れたゴム材質の中でも酸素ラジカル耐性に焦点を当てた特殊グレードの選択を推奨しています。
フロロパワーFFRは、原材料のパーフルオロエラストマー(FFKM)に由来する腐食性ガスへの耐性や耐熱性は元より、耐ラジカル性と低パーティクル性を備えたプラズマ専用グレードです。プロセスガス(O2、並びにCF4、NF3、HBr、CL2、NH3、SiH4など)のラジカルアタックで重量が減少してもパーティクル発生量が極めて少なくなるように設計されています。また機械的性質にも優れていることから、耐プラズマ・O2ラジカル用FFKMの上級グレードであるフロロパワーFFTよりも動的箇所での使用に適しており、帯電性が低くパーティクル吸着が抑えられることと併せ、半導体製造のドライエッチング装置やCVDプロセス装置のゲートバルブ、ISOバルブ(アイソレーションバルブ/振り子式バルブ)、或いはドアバルブなどのシール材として、高い評価を集めています。ラジカルに係る重量減少の観点のみから便宜的に上級と中級にグレードを分けていますが、それぞれに異なる特性を担っている部分がある旨にご留意ねがいます。
尚、フロロパワーFFRは、半導体製造などの電子産業に向けてプラズマ耐性を基軸に開発されたゴム材質です。機械的性質など、一般的な工業用途には積極的な配慮が為されていない組成がありますので、使用環境や目的に応じた適切なものを選択するようにして下さい。
* Oリング以外でも様々な形状の製作が可能なので、お気軽にお問い合わせ下さい。
* フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。
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化学構造
4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルエーテル共重合物です。主鎖の全てがフッ素化合物で炭化水素結合が無い為、高温や腐食性ガスに対して強い耐性を有しています。また、全体的に殆どフッ素化されている構造を持ちながら、補助脚のCSMに拠って架橋を促すことが可能になっています。
関連する法規制等
フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質には、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として検討する際は、十分に注意して下さい。
フロロパワーFFRと耐プラズマ性の評価試験(特定条件下での重量変化率)
耐プラズマ性に優れるグレードの中でも秀でた酸素(O2)ラジカル耐性が備わっているフロロパワーFFT、並びにフロロパワーFFRに対して行った耐プラズマ性の評価試験データは、以下の通りです。
プロセスガス(O2:CF4)の混合比率=20:1 RF power:2.5kw 試験時間:30時間
プロセスガス(O2:NF3:HBr)の混合比率=1:1:1 RF power:1.5kw 試験時間:30時間
フロロパワーFFRの測定値
試験種類 | 項目 | フロロパワーFFR | 他社① | 他社② | 他社③ |
---|---|---|---|---|---|
常態物性試験 | 硬さ (JIS-A) | 72 | 69 | 70 | 73 |
引張強さ (MPa) | 21.2 | 15.95 | 15.67 | 13.27 | |
225 | 246 | 238 | 223 | ||
100%引張応力 (MPa) | 4.7 | 2.88 | 5.17 | 3.63 | |
耐熱老化試験 | 試験条件 | 200℃×70時間 | N/A | N/A | N/A |
硬さ変化 | 0 | N/A | N/A | N/A | |
引張強さ変化率 (%) | -3 | N/A | N/A | N/A | |
伸び変化率 (%) | 1 | N/A | N/A | N/A | |
試験条件 | 200℃×70時間 | 204℃×70時間 | 204℃×70時間 | 204℃×70時間 | |
圧縮永久歪み率 (%) | 29 | 15 | 18 | 15 |
使用温度範囲
推奨値は0~230℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。また最低温度域ではゴム弾性を失い易く、シール性に悪影響を及ぼすことがあります。ご注意下さい。
耐薬品性
反応性ガスに対する耐性は非常に優れていますが、一般的なFFKMよりも耐薬品性は劣ります。フロロパワーFFRは、耐プラズマ用途を念頭に開発されたものです。一般的なOリングとは異なる使用環境が想定されていることからOリングの耐薬品性(接触流体と材質の適合性)には掲載しておりませんので、下表を参考にして下さい。
薬品名 | 耐性 | 薬品名 | 耐性 |
---|---|---|---|
アセトン | × | ジメチルアセトアミド | ◎ |
アニリン | 〇 | テトラヒドロフラン | × |
アンモニア水 | ◎ | トルエン | ◎ |
IPA | ◎ | フッ酸 | ◎ |
エタノール | ◎ | フレオンR134a | × |
塩酸 | ◎ | 不活性フッ素オイル | × |
王水 | ◎ | ヘキサン | ◎ |
過酸化水素水 | ◎ | ベンゼン | ◎ |
苛性カリ | 〇 | ホルマリン | 〇 |
苛性ソーダ | 〇 | メタノール | ◎ |
酢酸 | △ | 硫酸 | ◎ |
硝酸 | ◎ | NF3 | ◎ |
BCl3 | ◎ | SF6 | ◎ |
CF4 | ◎ | SiF4 | ◎ |
CHF3 | ◎ | SiH4 | ◎ |
ClF3 | ◎ | TEOS | ◎ |
HBr | ◎ | Ti2Cl4 | ◎ |
◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可
注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。
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主な使用箇所
取扱注意点
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