フロロパワーFFCS(圧縮永久歪み抑制・耐熱FFKM)の概要

フロロパワー(Fluoro-Power)®シリーズに属すFFKM材質の耐熱・CS抑制タイプであるフロロパワーFFCS(Fluoro-Power FFCS/FP-FFCS)には、圧縮永久歪み(CS = Compression Set)の良化に焦点を当てた設計が為されています。320℃クラスの耐熱性と優れた耐薬品性を兼ね備え、特に高温域の動的な環境で秀逸な性能を発揮します。

但し、耐熱タイプのFFKM材質として代表的なフロロパワーFFSとの比較では、圧縮永久歪み率が低く抑えられている反面、最高温度域ではゴム弾性の維持力が劣ります。また、原材料パーフルオロエラストマー(FFKM)に由来する強酸や強アルカリ、極性溶剤に対する優秀な耐薬品性を有しているものの、飽和蒸気やアミン系流体には適しません。

フロロパワーFFCSは、高温環境で開閉が繰り返される装置のシール部位などで、その真価を発現します。動的用途なのか静的用途なのかを主軸に、他の耐熱グレードとの適切な使い分けが望まれます。

 

 * Oリング以外でも様々な形状の製品製作が可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
 
* フロロパワー(Fluoro-Power)®は、桜シール株式会社の登録商標です。

>>>フロロパワーシリーズ(高機能材)
>>>材質の一覧(ラインナップと性能)
>>>材質名称の対比(規格/メーカー)

CSM:Cure Site Monomer

化学構造

4フッ化エチレン・パーフルオロメチルビニルエーテル共重合物です。主鎖の全てがフッ素結合(C−F)であり、炭化水素結合(C−H)が存在しないことから、非常に優れた耐薬品性や腐食ガス性、耐熱性を有します。全体的にフッ素化されているこの構造では、架橋を促すことが難しい為、補助脚としてCSM(Cure Site Monomer)が付加されます。特にフロロパワーFFCSには、パーフルオロエラストマー(FFKM)の中でも特異なCSM、及びそれに対応する配合剤に拠って、他のFFKM材とは別様の架橋が形成されています。圧縮永久歪みをはじめとする物性面だけでなく、耐熱性や耐薬品性といったフロロパワーFFCSが持つ様々な性能側面は、この特殊な架橋に由来しています。

 

関連する法規制等

  • RoHS指令10物質(Pb, Cd, Hg, Cr6+, PBB, PBDE, DEHP, BBP, DBP, DIBP)の含有量は閾値以下です。
  • REACH規制対象物質の意図的な添加はしておりません。
  • TSCA PBT5物質(DecaBDE、2,4,6TTBP、PIP(3:1)、HCBD、PCTP)の意図的な添加は行っておりません。

フロロパワーFFCS(圧縮永久歪み抑制・耐熱FFKM)の特性値や物性値

フロロパワー(Fluoro-Power)®ほか、カルレッツ(Kalrez)®などの各メーカーが掲げる高機能ゴム材質には、互換的に使用できるものが多い反面、特定の用途を目的に特別な性能が付与されているものも含まれています。相当品として取り扱う場合は、使用条件などを注意深く確認して下さい。

 

フロロパワーFFCSの圧縮永久歪み

高温条件下での圧縮永久歪み性能が秀でており、長時間に亘る連続の高温環境であっても、優れた性能を発揮することが出来ます。

70時間温度別圧縮永久歪み

試験片:P-26 圧縮率:25% 試験時間:70時間

300℃付近までは、特に優れた圧縮永久歪み率を保持します。繰り返し開閉する動作箇所など、高温下での動的な使用に適しています。

長時間圧縮永久歪み

試験片:P-26 圧縮率:25% 試験温度:250℃

長時間を経ても圧縮永久歪み率の変化が低く抑えられ、動的環境での長寿命化が実現されています。

フロロパワーFFCSの測定値

試験種類 項目 フロロパワーFFCS

常態物性試験

硬さ(JIS A)

80

引張強さ(MPa)

25.3

伸び率(%)

159

100%引張応力(MPa)

15.8

耐熱老化試験

試験条件 200℃×70時間
硬さ変化 0
引張強さ変化率(%) -5
伸び変化率(%) -3

圧縮永久歪み試験

試験条件 200℃×70時間

圧縮永久歪み率(%)

9

使用温度範囲

推奨値は0~320℃です。但し、最高温度域での継続使用は熱硬化による破損が生じやすく、寿命が短くなります。逆に、最低温度域ではゴム弾性が低下する為、シール性に悪影響を生じる危険が高まります。ご注意下さい。尚、250℃以上で使用する場合には熱膨張が大きくなりますので、通常の溝設計よりもつぶし代を小さめに、溝を大きめに設定することを推奨します。

 

圧力特性

最高圧力の推奨値は8MPaです。但し、諸条件によって数値は異なります。尚、耐圧性バックアップリングの併用で向上させることが出来ます。

 

耐薬品性

優秀です。殆どの薬品に耐性を有し、様々なゴム材質の中でも秀でています。但し、フロロパワーFFをはじめとする他のFFKM材質との比較では、アミン類や水蒸気などへの耐性が劣っており、注意が必要です。Oリングの耐薬品性(接触流体と材質の適合性)に於いてより多くの液体や気体に対する耐久性の目安を掲載しておりますので、下表と併せて参考にしてみて下さい。

薬品名 耐性 薬品名 耐性
アセトアルデヒド ジメチルアセトアミド
アセトン ジエチルエーテル
アニリン A重油
アンモニア水 シンナー
IPA 水酸化リチウム
エタノール 100℃水蒸気 ×
エチレングリコール テトラクロロエチレン
エチレンジアミン × テトラヒドロフラン
N-メチル-2-ピロリドン 灯油
塩化エチル トリクロロエチレン
塩酸 トルエン
エンジン油 トリエチルアミン ×
王水 ブチルアセテート
過酸化水素水 フッ酸
苛性カリ フレオンR134a ×
苛性ソーダ 不活性フッ素オイル ×
ガソリン ブレーキ油
カップグリス ヘキサン
蟻酸 ベンゼン
キシレン ホルマリン
クロロブロモメタン メタクリル酸
クロロホルム
酢酸 メタノール
酢酸エチル MEK
硝酸 メチルイソブチルケトン
シクロヘキサン モノエタノールアミン ×
次亜塩素酸ソーダ ラッカー
ジオキサン リン酸エステル系作動油
四塩化炭素 硫酸
ジクロロメタン リチウムグリス
シリコングリス 六フッ化硫黄

◎:使用可 〇:多少の影響有り △:あまり推奨しない ×:使用不可

注)上記は参考データです。温度や圧力、その他の条件によって使用可否は変化します。

 

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フロロパワーFFCS(圧縮永久歪み抑制・耐熱FFKM)の使用について

主な使用箇所

  • 高温真空装置開閉部のシール材
  • 半導体CVD装置の開閉部シール材
  • 半導体酸化・拡散装置の耐熱シール材
  • 高温継手、カプラのシール材
  • 高温環境でのメカニカルシールのシール材
  • 化学プラント設備のシール材

 

取扱注意点

  • 耐候性に優れ、光や熱による外部影響を受けにくい材質ではありますが、念のため湿度の低い冷暗所で保存して下さい。
  • 負荷が掛からない状態で保存して下さい。伸長や圧縮状態で保存すると変形や亀裂が発生しやすくなります。
  • 推奨温度や圧力を超えてのご使用は、急激な劣化を起こします。ご注意下さい。
  • 適さない流体との接触には十分注意して下さい。

 

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