オイルシールの耐久性についてのまとめです。オイルシールの寿命、耐熱性、耐薬品性、許容周速、耐圧性について概要を解説し、目安となる参考値などを提示いたします。オイルシールの選定に係る補足資料としてお役立て下さい。尚、オイルシールの耐久性には、その種類が使用環境に適したものであるかだけでなく、偏心量などの諸条件が複合的に影響します。
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No. | ゴム材質の材質系統 | 潤滑油の種類 |
① | ニトリルゴム(NBR) | ギア油 SAE90 |
② | エンジン油 SAE30 | |
③ | シリコンゴム(VMQ) | エンジン油 SAE30 |
④ | フッ素ゴム(FKM) | エンジン油 SAE30 |
オイルシールの耐熱性(許容温度の上限)
オイルシールの耐熱性は、リップ部のゴム材質が許容できる温度の範囲によって決定します。従って、リップ部に於いて最も重要な機能部であり、軸の回転によって摩擦熱を生じることとなるリップ先端の温度を推定することは、前述の寿命などを勘案する上でも大変重要です。リップ先端の温度は、シール対象物(オイルシール接触部)の温度、及びリップ先端の上昇温度(以下のグラフ参照)の合計で求められます。但し、以下のグラフの値は、試験対象のオイルシールにJIS B 2402のタイプ1(SC型/NOK、MHS型/KOYO、M2型/桜シール)、またはタイプ2(SB型/NOK、HMS型/KOYO、X2型/桜シール)を用いた実測値がベースになっています。補助リップが備わっているタイプ4(TC型/NOK、MHSA型/KOYO、M型/桜シール)、またはタイプ5(TB型/NOK、HMSA型/KOYO、X型/桜シール)のオイルシールでは、グラフの値を2倍程度として計算して下さい。また、リップ先端の上昇温度は油の粘度とも比例する傾向がありますので、ギア油では1.5倍程度、グリスでは3倍程度と考えて下さい。
尚、リップ部の材質一覧などで掲げられている許容温度の上限は、一般に最高温度域での継続的な使用を前提にしたものではありません。持続的にその温度で使用すればシール不良や破損を起こす可能性があることを考慮し、耐熱温度の範囲は目安として捉えるのが望ましいといえます。Oリング(ゴム材質)の耐熱性なども参考にして、適切な材質選定を行って下さい。
オイルシールの耐薬品性(耐油性)
オイルシールの有する様々なシール対象物(接触流体)への耐久性は、リップ部のゴム材質、バネの材質、そして金属環の材質に分けて、それぞれの耐薬品性(耐油性)を検証する必要があります。その中でも特にシール対象物からの影響を受け易いリップ部のゴム材質は、オイルシールの選定に於いて要となる項目のひとつです。シール対象物からの悪影響(膨潤や分解、抽出といった現象)に係るゴム材質の変化メカニズムはOリングのゴム材質と同じ理論で説明することが出来ます。Oリング(ゴム材質)の耐薬品性や耐油性などを参考にして、適切な材質選定を行って下さい。
オイルシールと周速(許容周速)
オイルシールのリップ先端は、軸の回転が速くなるにつれて軸に追随し切れなくなり、最終的には漏れが発生してしまいます。その際の速度をオイルシールの許容周速といい、リップ先端と軸との相対的な速度で表されます。オイルシールの許容周速には、偏心量(軸偏心+取付偏心)が最も大きな影響を及ぼしますが、偏心量が小さい場合には、リップ部のゴム材質や型式(形状の規格)によっておおよそ一定の値を示します。以下は、日本国内で最も一般的な型式(形状の規格)であるJIS B 2402のタイプ1(SC型/NOK、MHS型/KOYO、M2型/桜シール)、タイプ2(SB型/NOK、HMS型/KOYO、X2型/桜シール)、タイプ4(TC型/NOK、MHSA型/KOYO、M型/桜シール)、そしてタイプ5(TB型/NOK、HMSA型/KOYO、X型/桜シール)について、特定の条件下に於ける許容周速の参考値をグラフでまとめたものです。目安としてお役立て下さい。
オイルシールの耐圧性(許容圧力)
オイルシールが許容できる内部圧力は、型式(形状の規格)やリップ部のゴム材質の種類によって大きく変動します。日本国内で最も広く使用されているJIS B 2402のタイプ1(SC型/NOK、MHS型/KOYO、M2型/桜シール)、タイプ2(SB型/NOK、HMS型/KOYO、X2型/桜シール)、タイプ4(TC型/NOK、MHSA型/KOYO、M型/桜シール)、そしてタイプ5(TB型/NOK、HMSA型/KOYO、X型/桜シール)といった型式では、一般に許容圧力の限界を0.03MPa(0.3kgf/ cm2)程度としています。しかしそれらの型式を用いた場合でも、例えば軸径φ25mm以下のものでは、周速2m/s以下であれば受圧面積の関係で0.05〜0.1MPa(0.5〜1 kgf/ cm2)程度までの圧力下に於いて、使用できることもあります。以下は、タイプ1及びタイプ2のオイルシールについて、特定の条件下に於ける許容圧力の参考値をグラフでまとめたものです。尚、許容圧力は許容周速と同様に偏心量(軸偏心+取付偏心)からも大きな影響を受けて変動します。従って、オイルシールが適正な耐圧性を維持する為には、軸(シャフト)やハウジングの精度を推奨範囲で仕上げておく必要があります。
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