ゴム(Oリング材質)の持つ粘着や固着といった性質は、利用価値が高い反面、Oリングなどの用途では動作不具合の原因になり易い特性です。動的用途に於いて粘着が摩擦抵抗を増加させたり、静的用途に於いて固着が相手材への貼り付きを発生させたりといった現象がそれに該当します。ゴムの粘着は、ゴム自身が保有する貼り付く力によって発生します。この力はゴム材と相手材が接触した瞬間から発生し、ゴム材の機械特性と周囲環境(圧力や温度など)で大きく変化します。一方ゴムの固着は、時間と共に周囲環境の影響によってゴム材の架橋が密になっていくことで発生します。架橋によってゴム材の表面に発現した反応物が膜を形成し、それが相手材に密着した状態が長時間続くと、非常に剥がし難くなってしまいます。
ゴム材の粘着や固着を低減するに当たっては、配合技術や特殊処理を用いることで長期間に亘って効果を持続できる方法と、一般的な処理(追加工)を用いることで一時的な効果を得るだけの方法があります。
特殊配合や特殊処理によるもの
・フロロアップシリーズ: 桜シール株式会社
摩擦抵抗の低いフッ素ゴム(FKM及びFFKM)の各種です。グレードによって、様々な特性を保有しています。
・ニューラバフロンフッ素ゴムOリング(NRF4640): 日本バルカー工業株式会社
No.4640の表面を改質したフッ素ゴムОリングで、製品同士や機器との粘着がなく、主に固定用シールに用いるものです。
・フロロプラス: ニチアス株式会社
表面改質方法で処理したフッ素ゴム製品で、耐薬品性・耐熱性はそのままで摩擦特性・非粘着性を改良したものです。
・すべるゴムОリング ベアリーER3201 ER3000: NTN株式会社
摩擦抵抗の低い材料で製作したОリングで、ER3201はNBR、ER-3000はFKMをベースとした材質となっています。
・UE処理、RE-O処理: 三菱電線工業株式会社
表面改質方法による処理で摩擦抵抗を減らしたもので、UE処理はFKMを対象、RE-O処理はVMQを対象に処理したものです。
一般的な処理によるもの
・テフロンコーティング(簡易コート)
フッ素樹脂(PTFE/テフロン)でOリングの表面を被膜(厚さは5.1〜20.3μm程度)したもので、摩擦抵抗の軽減に効果があります。比較的安価にOリング同士の貼り付きを防止し、また装着性を向上させることが出来ます。但し、ゴム材質に対するフッ素樹脂の定着処理温度は金属に対するそれよりも低い為、定着性に劣り、直ぐに剥離してしまう欠点があります。
テフロンコーティングの耐久性(ゴム材質との相性) | |
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ゴム材質(Oリング材質)の種類 | コーティングの強さ |
ニトリルゴム(NBR)系の材質 | 〇 |
フッ素ゴム(FKM)系の材質 | △ |
シリコンゴム(VMQ)系の材質 | △ |
エチレンプロピレンゴム(EPDM)系の材質 | 〇 |
クロロプレンゴム(CR)系の材質 | 〇 |
パーフロ(FFKM)系の材質 | × |
〇:強い △:あまり強くない ×:弱い |
フッ素樹脂でOリングを完全に被覆したもので、高価ですが耐薬品性や表面潤滑性に優れています。但し、動的な使用は、被覆が割れてしまうことから不向きです。
・表面研磨
Oリングの表面を物理的に研磨して光沢面を除去し、粗くすることで固着を低減する方法です。貼り付きに対しては多少の効果が望めますが、ゴム材料そのものの固着性が低減している訳ではなく、大きな効果は期待できません。また、シール性能に対しても悪影響をもたらす場合があります。
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