A) グリスのシール
Vリングにとって、グリスは最も相性の良いシール対象物のひとつです。内外どちらに取り付けても優れたシール性を発揮できるので、様々な場面で活用されています。下図は、(a)は内側から、(b)は外側から取り付けを行った場合を表しています。(b)の場合では、内部からのグリスをシールすると共に、外部からのダストや水の飛沫をシールすることが出来ます。
(a) |
(b) |

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・グリスのシールに於けるシール面の仕上げ
適正なシール面の表面粗さは、周速によって異なるだけでなく、Vリングとシール面の間に介在する擦過性粒子の有無によっても異なります。推奨される面粗度を下表にて提示いたしますので、設計の参考にして下さい。
Rmax〔μ〕
周速 |
0〜2 m/s |
2〜5 m/s |
5〜8 m/s |
8 m/s 以上 |
グリスのみ |
30 |
25 |
20 |
15 |
擦過粒子介在の場合 |
10 |
10 |
7 |
7 |
* 但し、Rmaxは1〔μ〕以下にはしないで下さい。Vリングがシール面に密着してしまうことで、逆に摩耗を促し、熱発生も大きくなってしまいます。
B) オイルのシール
Vリングによるオイルのシールでは、Vリングのシール面に対する接圧が一般的なオイルシールの軸緊迫力に比較して約1/3〜1/10程度と低いことから、油膜の厚みが大きくなり、通常の使用方法では問題が生じてしまいます。また、オイルの中に介在する粒子(異物)による油膜破壊や、シール面の旋削加工痕によるポンプ効果も、オイル漏れを誘発する原因となります。従って、一般にVリングはオイルをシールすることには不向きなので、要求されるシール性に応じ、以下のように使用方法を切り替えることを推奨いたします。
1) シール性に対する要求が低い場合
若干の漏れが許容される箇所では、通常どおりの方法で使用します。
2) シール性に対する要求が高い場合
確実なシールが必要とされる箇所では、Vリングを加工する「有孔Vリング方式」、及びシール面を加工する「螺旋加工方式」を適用し、使用します。
・「有孔Vリング方式」と「螺旋加工方式」の使用条件
どちらの方式を採用するかに当たっては、周辺機構ほか、油面や軸周速、回転方向なども検討して下さい。
検討項目 |
有孔Vリング |
螺旋加工 |
回転方向 |
正、逆あり |
〇 |
× |
一方向のみ |
〇 |
〇 |
最大油面高さ |
飛沫程度 |
〇 |
〇 |
Vリングリップ下部以下 |
× |
〇 |
軸芯程度 |
〇 (P+N) |
〇 |
充満 |
× |
〇 |
軸周速 V(m/s) |
0 < V ≦ 1 |
× |
〇 |
1 < V ≦ 2 |
〇 (P+Nは不可)
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〇 |
2 < V ≦ 10 |
〇 |
〇 |
10 < V ≦ 12 |
〇 (P+N) |
〇 |
12 < V ≦ 15 |
〇 (P+N) F |
〇 (F) |
15 < V ≦ 18 |
〇 (P+N) F |
〇 (St)
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18 < V ≦ 30 |
× |
〇 (St) |
V > 30 |
応相談 |
〇:使用可 ×:使用不可 P:有孔Vリング N:標準Vリング F:固定リング St:固定使用
a) 有孔Vリング方式(Vリングを加工)
有孔Vリング方式とは、Vリングのリップに1〜3個の小孔を設け、一度リップから漏れたオイルを遠心力によって孔から室内に回収する使い方です。原則として、オイルをシールする場合にのみ適用されます。この方式の原理を正常に働かせる為には、軸周速、及び漏れたオイルの流れの方向(シール面を伝わる→オイル漏れ/必要な遠心力が作用してリップ内側を伝わる→正常に作動)を勘案する必要があります。尚、周速や油面などには制限(下図参照)がありますので、注意して下さい。
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1≦V≦10 m/s 油面はリップ下部以下 |
2≦V≦12 m/s 油面は軸芯まで |
12≦V≦18 m/s 油面は軸芯まで |
有孔Vリング方式に於ける孔の設置は、Vリングの大きさに応じて以下のように行って下さい。尚、孔は同一半径上に設けます。

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V-10 | V-18 |
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Vリングサイズ (呼び番号) |
a |
b |
d |
10〜18 |
1.1 |
- |
1.0 |
20〜35
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1.4 |
2.0 |
1.2 |
40〜65 |
1.75 |
2.5 |
1.5 |
70〜100 |
2.0 |
2.8 |
1.6 |
110〜150 |
2.3 |
3.2 |
1.8 |
160〜199 |
2.4 |
3.4 |
2.0 |
200以上 |
3.25 |
4.5 |
2.5 |
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V-20 | V-199 |
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V-200〜 |
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b) 螺旋加工方式(シール面を加工)
螺旋加工方式とは、前述のシール面の旋削加工痕によるポンプ効果を防止する為に、シール面に螺旋溝を設けて強制的に別のポンプ効果を作用させる使い方です。螺旋溝の仕様は、以下のとおりです。尚、ハウジングはポンプ効果を妨げないように外気に通じ、ベンチレーションが行われている必要があります。また、Vリングを固定側で使用する場合には、螺旋溝の方向が逆になりますので、ご注意ください。

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軸周速(m/s) |
螺旋ピッチ(mm) |
0.1〜1.0 |
2.5±0.5 |
1.0〜10.0 |
1.7±0.3 |
10.0〜30.0 |
1.4±0.3 |
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・オイルのシールに於けるシール面の仕上げ
適正なシール面の表面粗さは、周速によって異なるだけでなく、Vリングとシール面の間に介在する擦過性粒子の有無によっても異なります。目安としての面粗度を下表にて提示いたしますので、設計の参考にして下さい。
Rmax〔μ〕
周速 |
0〜2 m/s |
2〜5 m/s |
5〜8 m/s |
8 m/s 以上 |
オイルのみ |
20 |
15 |
12 |
10 |
擦過性粒子介在の場合
|
10 |
10 |
7 |
7 |
* 但し、Rmaxは1〔μ〕以下にはしないで下さい。Vリングがシール面に密着してしまうことで、逆に摩耗を促し、熱発生も大きくなってしまいます。
・Vリングの固定側使用
Vリングを取り付けた回転軸の周速が上がると、遠心力の影響を受けたリップがシール面から離れ、軸に対して垂直に近くなっていきます。軸周速が15m/sを超える場合には、Vリングを下図のように取り付けることで、固定側で使用することを検討して下さい。また、18m/sを超過する場合には、必ず固定側で使用して下さい。尚、固定側での使用に於いてはVリングのリップに遠心力が働かないので、B1寸法を通常の使用時よりも10%程度大きくするようにして下さい。
例: V-200AのB1寸法 通常の使用では、20(±4) 固定側使用では、22(+2,−0) |
C) 水などの薄膜形成体のシール
Vリングは、水などの粘性の低い薄膜形成体のシールには不向きです。薄膜形成体に属する液体は、水のほかに酸や洗浄液などが挙げられますが、Vリングでそれらをシールする場合は、要求されるシール性に応じ、以下のように使用方法を切り替えることを推奨いたします。
1) シール性に対する要求が低い場合
若干の漏れが許容される箇所では、通常どおりの方法で使用します。
2) シール性に対する要求が高い場合
確実なシールが必要とされる箇所では、下図(a)のようにドレン孔を設け、漏れた液体を逃がす必要があります。また、下図(b)のように2個のVリングを取り付け、その間にドレン孔を配置することもあります。
(a) |
(b) |
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