ウェアリング

ウェアリングのまとめです。材質や特徴、寸法などを図や表入りで解説します。ウェアリングの選定や設計、使用に役立てて下さい。

ウェアリングとは、ピストン部の軸受材として使用される部品で、潤滑性を高め、偏心を弱めることでパッキンを保護する役割を持っています。

JIS B 8663:2010に「油圧-シリンダ-ピストン及びロッド用ウェアリングのハウジング寸法」の規格がありますが、これは2006年に第2版として発行されたISO10766を基にした規格で、ウェアリングの材料や形状の規定はなく、使用されるハウジング寸法のみの対応です。

 

[ウェアリングの種類]

ウェアリングは主に、ロッド用ウェアリングとピストン用ウェアリングの2種類のタイプがあります。基本的にウェアリングは、材質と寸法を指定すれば選定可能ですが、メーカーにより、面取りが施されているものもや、カットのタイプが特殊な製品もあります。

 

[ウェアリングの材質]

ウェアリングは樹脂系の素材でできており、次のようなものがあります。

材質 硬度 温度範囲
(℃)
適用流体 特徴
テフロン®
(PTFE)
55〜70 -55〜200 一般石油系作動油
水-グリコール系作動液
水-油エマルジョン系作動液
リン酸エステル系作動液
充填材無し、又は充填材入りPTFEでできた軸受で、溝に一体装着するタイプとテープ状のタイプが有り、テープ状はシリンダ径およびロッド径に合わせ自由にカットして使用可能です。
布入り
フェノール
樹脂
-55〜120 一般石油系作動油
低温用石油系作動油
リン酸エステル系作動液 
布入りフェノール樹脂製で耐荷重性に優れたピストン軸受です。
一体溝に装着することが可能で、ピストンの焼き付きやカジリを防止します。
布入り
ポリエステル
樹脂
-55〜120 一般石油系作動油
水-グリコール系作動液
水-油エマルジョン系作動液
リン酸エステル系作動液
布入りポリエステル樹脂製で、耐荷重性と耐スティックスリップ性に優れたピストン軸受です。
一体溝に装着することが可能で、ピストンの焼き付きやカジリを防止します。

※これらのデータはあくまで参考値ですので、テストを行った上で使用可否を判断されることをお奨めします。

 

[ウェアリングの耐性]

主な流体に対する各材質別の耐性は次の通りです。

流体\材質 PTFE 布入りフェノール樹脂 布入りポリエステル樹脂
作動油
リン酸エステル系作動液
水-グリコール系作動液
水-油エマルジョン系作動液
エンジンオイル
ギヤーオイル
ブレーキ液
シリコーンオイル
グリース
塩素系切削油
硫黄系切削油
水溶性切削油
スチーム

※これらのデータはあくまで参考値ですので、テストを行った上で使用可否を判断されることをお奨めします。

 

[ウェアリングの選定]

ウェアリングは、使用条件に応じた形状、材料を選択が必要です。

形状
ウェアリング(布入り)
ウェアリング(PTFE)
材料 布入りフェノール樹脂・布入りポリエステル樹脂 PTFE(テフロン®)
特徴
  • 耐圧縮特性に優れた標準ウェアリング
  • 低速・高荷重領域で優れた耐摩耗性を示す
  • 1箇所バイカットしてあり、様々な径、幅のものがある
  • 特殊なサイズも製作可能
  • 低摩擦でスティックスリップの発生がないウェアリング
  • 高速低荷重領域で優れた耐摩耗性を示す
  • フープ状になっており、シリンダ径に合わせてカットが可能
適用
温度
-55〜120℃ -55〜220℃

※これらのデータはあくまで参考値ですので、テストを行った上で使用可否を判断されることをお奨めします。

[ウェアリングの設計]

ウェアリングの寸法

メーカーによっては、規格化されている場合もありますが、基本的にウェアリングの寸法選定の際は、外径・内径・厚み・カットの指定が必要となります。
ウェアリングのカット長さの算出方法は下記のとおりです。

 

ウェアリング-1.jpg

L:全長  D:ボア径  d:装着部内径  t:リング厚  S:カット幅

◆ピストン用ウェアリングの場合(単位:㎜)                                                ◆ロッド用ウェアリングの場合(単位:㎜)

L = π ・(D-t)-S                                                                                       L = π ・(d+t)-S