Oリングの溝設計② (溝加工と溝部の表面粗さ)

Oリング溝設計(溝加工と溝部の表面粗さ)をまとめた技術資料です。Oリングを装着する溝の加工に関して、溝部の金属材質や最適な表面仕上げ方法、面粗度の規格値を掲載いたします。Oリングの溝設計① (溝形状と溝寸法)と併せ、Oリングの選定や設計の資料としてお役に立てて下さい。

 

Oリングの用途の中でも固定用途に於いては、Oリングに接触する溝部の面を取り立てて考慮する必要はありません。シール対象に対してOリングの耐圧性が十分であること、耐油性耐薬品性が適合していること、そして機器の作動条件に耐え得る機械特性を保持していること等々、つまりはOリング本体の選定が適切であれば、通常は溝部の材質や加工がOリングのシール機能に対して直接的な影響を与えることは殆どありません。それに対して運動用途に於いては、摺動面の金属材質や面粗度がOリングの寿命と密接に関係する為、溝部の面についてのしっかりとした配慮が必要になります。

 

[溝部の材質]

一般的に摺動面が硬いほどOリングの寿命も長くなるとされていることから、シリンダでは鋳鉄や鋼が、ロッドでは硬化された鋼が、Oリング溝部の金属材質に適しています。逆にアルミニウムや黄銅、青銅、モネルメタルといった軟質材は耐摩耗性に劣ることから摺動面には不適ですが、低圧の空気系統などの特殊な場合に於いては使用されることもあります。

金属 特性 Oリング
耐腐食性 耐摩耗性 耐汚染性 金属の保護性 固定用 運動用
カドミウム (Cd) × × ×
クロム (Cr) ×
銅 (Cu) × ×
金 (Au) ×
鉄 (Fe) × ×
鉛 (Pb) × × ×
ニッケル (Ni)
ロジウム (Rh)
銀 (Ag) ×
錫 (Sn) × ×
亜鉛 (Zn) × × × ×
◎:優 〇:良 △:可 ×:不可 

[溝部の仕上げ方法]

Oリングと摺動面の摩擦抵抗を最小にする為の仕上げ方法には、ホーニングやバニシング(ローラバニシングも含む)、硬質ニッケルメッキ後のポリッシュなどを推奨しております。また、耐熱性、耐摩耗性、低摩擦性が要求される場所では、硬質クロムメッキなども使用されています。 

 

[溝部の表面粗さ]

Oリングのシール性は溝部の表面粗さが低いほど向上しますが、鏡面仕上げのような状態では摩擦抵抗が高くなり、Oリングの寿命が短くなってしまいます。そのように相反する条件を踏まえ、JISでは最適な表面粗さについて、一般工業用(旧JIS B2406)と航空機用(MIL-G-5514F)として以下のような数値を規定しています。

機器の部分 用途 圧力のかかり方 表面粗さ
Ra Rz
溝の側面 及び 底面 固定用 脈動なし 平面 3.2 12.5
円筒面 1.6 6.3
脈動あり 1.6 6.3
運動用 バックアップリングを使用する場合 1.6 6.3
バックアップリングを使用しない場合 0.8 3.2
Oリングのシール部の接触面  固定用 脈動なし 1.6 6.3
脈動あり 0.8 3.2
運動用 0.4 1.6
Oリングの装着用面取り部 3.2 12.5

Rz:最大高さ粗さ

 

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